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【2017/05/23 02:22 】 |
女神たち


「来たわね、キルシェ」
菜由がそう呟くと彼女の背後に小麦色の肌の少女が現れた。背中には大きな麻袋を担いでいる。

「夏休み前だから授業には出ておきたかったのだが」
少女は特に機嫌を損ねているというわけでもなくただ無表情にそう言うと担いでいた麻袋を丁寧に地面に降ろした。その中身からくぐもった唸り声、そして暴れているのかのたうつ様に動き回っている。

「きちんと捕獲してきたぞ」
「さすがキルシェね」

キルシェが麻袋の口の紐を解くと口に何十ものテープを巻かれ、両手両足をテープで縛られた少女が出てきた。不意に外に出されて眩しい陽の光に目を細めている。


「さーってやっと捕まえたわよ、千紗都」
ショートカットの少女は門倉千紗都。キルシェに丁寧に縛りを解かれた千紗都は大きく深呼吸をした。

「お、やー菜由ちー」
「やー菜由ちーじゃないわよまったく。とにかくスグに今すぐにため込んだ書類やってもらわないといけないのよ」

腰を曲げて見下ろす格好の菜由に千紗都は明らかに不機嫌そうに顔を上げる。

「えー、デスクワークは苦手なんだよねー」
「苦手でもやんなさいっ!じゃ、キルシェ―」
「了解した」

傍らのキルシェに声をかけるとキルシェは頷いて地面に座り込んだままの千紗都をひょいと持ち上げる。

「え、や、ちょっとー」
「ホテルでいいのか?菜由」
「ええ、部屋にネットブックが置いてあるからそれで作業できるようになってるわよ」

キルシェはひとつ頷くと暴れる千紗都を肩に担いでホテルへの道を歩き出す。千沙都は菜由の視界から消えるまでキルシェの肩の上で暴れていた。



「さーって、そんじゃ行こうかしら」
菜由はそう自分に気合を入れるように呟くとキルシェたちとは逆方向に向けて歩き出した

その先は、
女子インテルミラノクラブハウスだった







菜由が許可をもらってからクラブハウスグラウンドに足を踏み入れると練習は終盤、紅白戦を行っていた。

綺麗に刈り揃えられた緑色の天然芝のピッチを走り回る女性たち。
赤いビブスを羽織っているのがどうやらレギュラーチームのようだ。

まずゴールマウス前に陣取った大柄の女性を見る。インテルの守護神でありアズーリの守護神でもあるイリノア・メッサーラ。
第1回ダイヤモンドカップの際初めて代表に選出され、そのときのレギュラーであったACミランのニーナ・バレンティノからあっさりレギュラーポジションを奪い取った逸材。指示よし動きよし、体躯もあるまさにGKをやるために生まれてきたような女性選手。だが普段の彼女は少女趣味であり、ヒラヒラのフリルのついたワンピなどを好んで着るような可愛らしい面がある。LCCと契約した初の外国人女性選手でもある。

そして4バックの中央にはメキシコ代表選手であるセレニーナ・ドミンゲス。そしてまだ18歳ながらレギュラーの座を不動のものとしているカレン・アダミッチ。
ふたりとも165センチを超える女性としては大型の部類に入る選手であり、特にセレニーナのDFリーダーとしての資質は先の北中南米選手権でも最優秀選手に選ばれるなどその評価は内外から高い。

両サイドバック。左はアズーリのバニア・カモネージ。
27歳のベテラン選手は代表での試合出場の経験こそ少ないが、選出暦はすでに5年を超える。
足の速さもクロスの正確さもぴか一であり守備力も、申し分ない。
右サイドバックは20歳の若手選手であるミランダ・ネロ。
守備よりも攻撃に味を見せる選手であり、彼女のサイド攻撃はインテルの重要な攻撃オプションだ。


そして中盤に目を向ける。
セントラルMFには言わずと知れた「氷の女神」こと、ナスターシャ・シルベストリ。
そしてもうひとりのセントラルMFであるフィアッカ・マルグリットはナスターシャよりも少し前目のポジションをとることが多いようだ。
フィアッカは元々アメリカギャラクシー1部のNYストレンジスの選手だったが第2回ダイヤモンドカップ後にインテルに迎えられた。
代表ではケイト・ブッシュと同ポジションであったため彼女のバックアッパーという立場で試合出場がほとんどなかったがそれが彼女の実力を示すことでないことはここインテルでの戦績が全てを物語っている。
ストレンジスではトップ下ではあったが守備的ポジションもそつなくこなすことができ、両方に高性能を発揮するナスターシャとの相性はかなり良い。
特に攻撃面でフィアッカはその独特の感性を大いに発揮し、ラストパスの精度はナスターシャを上回るかもしれない。

中盤両サイド、左は次代スペイン代表とも囁かれているエステル・ヴァルディオラ。右にはイングランド代表のベル・メイヤー。
インテルの中盤構成の特徴からサイドアタッカーとはいえ守備的な位置や中央でのプレイも要求されるがこの両選手はそれもそつなくこなすだけのスキルを持っている。無論サイド攻撃は脅威になるところだ。

そしてFW。
ツートップの左には170センチを越える身長のアズーリであるカーリー・コンティ。
アンジェリカやファルコーニといった才能豊かなFW陣で代表では中々レギュラーポジションを確保することは難しいが、その高い身長を武器としたポストプレイは中盤に強さを見せるインテルというチームにはフィットしている。
そして、右にはティアナ・バイオレット。
元々メッシーナが彼女の経歴の出発点であり、そこでのプレイが評価されてのインテル入り。そしてこのインテルで彼女の才能が本当の意味で開花したというのが万人の印象である。
メッシーナではスーパーサブという位置づけだったティアナだったがこのインテルでは早々にレギュラーFWの位置を獲得。彼女自身半信半疑でそのレギュラーを勤めていたがその中でスタミナやフィジカルがぐんぐん上昇し、嗅覚ばかりに頼っていたプレイに安定感と大胆さが同居する現在のプレースタイルが確立されていった。
そしてそのプレースタイルの確立に最も寄与したと言われるナスターシャを敬愛し、恋慕とも言われかねないほど彼女を崇拝している。そしてナスターシャ自身も彼女を「今まで出会った中で最高のアタッカンテ」と評し、実にティアナの得点の半分以上がナスターシャからのパスによるものだったりする。








練習が終わり、ピッチの上の選手たちは三々五々といった感じでクラブハウスに向かう。
ピッチサイドに陣取っていた菜由の姿をいち早く見つけた選手のひとりが嬉しそうに駆け寄った。

「ナユ、ナユ、ひさしぶりー」
駆け寄ったイリノア・メッサーラはその大きく長い両腕を更に大きく広げて小さな菜由を抱きしめる。抱きかかえられた菜由はあまりの力にむせ返った。

「ちょ、痛いよイリノア―」
「ああ、ごめんなさいナユ。あんまり嬉しかったものだからつい」
抱擁を解いたイリノアの腕から離れた菜由は多少咳き込みながらもイリノアに対し親愛の笑顔を向けた。


「それにしても本当に久しぶりね」
「ええ、アナタのところのチサトは時たま来てくれるんだけどナユは滅多に来てくれないから嬉しいわ」

イリノアは少し照れくさそうにそう言って子供のような笑顔を見せる。試合中は誰彼構わず、先輩でありチームキャプテンであるナスターシャに対しても怒声を張り上げる彼女であったがいざピッチを離れると本当に可愛らしい仕草を見せる。彼女のそういう魅力的な部分に惹かれて菜由はLCCでの初の外国人選手契約をしたというのが本音だったのだが。



「あら、ナユじゃないの」
次に現れたのはナスターシャ・シルベストリ。隣にはティアナ・バイオレットを従えている。
そのティアナは菜由の顔を見るなり不機嫌な表情を造り上げた。
「久しぶり、ナーシャ」
菜由は右手を差し出し、ナスターシャも笑顔でその手を握って握手を交わした。次に菜由は隣のティアナにも右手を出したがティアナはぷいと横を向いた。

菜由とナスターシャとの交流は第1回ダイヤモンドカップ前、TMFA初の欧州遠征後までさかのぼる。
あの欧州遠征後テクニカルアドバイザーであり当時SCMの監督であったBucchiiとイタリア巡りの中でフィレンツェの彼女の実家で遭遇してからの仲だった。
LCC契約はしていないものの、友人としての交流は今までしっかり続いている。


「それで、今日は偵察かしら?」
ナスターシャの容赦のない言葉に菜由は後頭部を掻きながら乾いた笑い。ティアナの視線が殺人級に変わる。
「まっさかー、様子を見にきただけよ。それにしてもナーシャ、調子よさそうね」
「ええ、当然でしょ?なんたって―」
ナスターシャはそこでいったん言葉を切り、姿勢を正して菜由に向き直る。

「スクデットを賭けてあのローマと対戦できるんですもの」


そう言い切った。



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【2011/12/12 05:25 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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