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【2017/05/23 02:23 】 |
レナード・テスタロッサ


「ところで……」
レナードはほとんど表情を変えずに長い髪を優雅な動作でかきあげた。菜由の鼻腔にミント系の香りが僅かに入り込む。

「場所を変えようか。キミの護衛が出したその物騒なもので周りが騒がしくなっているみたいだ」


そう言われて菜由は思い出したように周りを見る。
ここはホテルの出入り口。

ベルボーイやフロントの従業員。更に周りを歩く人たち全ての視線が菜由たち、
いやキルシェの抜き放ったナイフの刀身に注がれている。だが当のキルシェはそれを無視し、構えを崩さない。


「じゃ、行こう」
短く言ったレナードがくるりと後ろを向いた。
また菜由の鼻に同じ匂いが入り込んだ。





「さて」
レナードに連れられて菜由とキルシェはホテルから5分ほど歩いた路地裏に来る。
大通りから1本脇に入っただけで人気のない冷ややかな空間が現われる。ローマという街の造りの雑さはこういうところにもあらわれるものだと菜由は考えていた。

「さて、何が聞きたいのかな?ミス・ナユ」
そう問われて菜由はそれまでまったく関係のないことを考えていた思考を呼び戻す。
聞きたいことはある。
本当にテッサの兄なのか?
私に何の用事なのか?
そして、

何故キルシェがここまで警戒をしているのか?



菜由は大きく息を吸い込んで、吐いた。そしてレナードに猫の様に大きな目を開いて視線をぶつけた。


「あなたは、何者なの?」



レナードは菜由の考え抜いた質問にあごに手を当てて少し考えた。

「ふむ、いい質問だね。質問に具体性が無いだけにどこまで答えればいいか迷ってしまうね」


さっきからキルシェはこのレナードという男のいちいち余裕そうな仕草に苛立っていた。
名前と髪の色からテッサの兄弟であることは窺えるが、それにしても性格が違いすぎる。
戦場で生きてきたと思わせる雰囲気を漂わせながらこの余裕の仕草はわざと人を苛立たせて愉悦に浸る嫌な人間の典型的なタイプであるといえよう。
ただこの余裕がレナードの実力どおりという事も未だ計りかねない今、感情に任せて不要な行動をとることは得策ではない。


レナードはもう一度長い7アッシュブロンドの髪を右手でかきあげた。


「では全部お答えしようか。お察しのとおり君の親友であるテレサは僕の妹。そして彼女とは幼少の頃から袂を分かっている。今の僕は……」


レナードが余裕たっぷりの表情で笑いかけた。



「評議会の人間さ」








驚く菜由とキルシェを見ながらクスリと笑い、レナードは更に話しを続ける。

「まあ、今のところは『統和機構』で好きに研究をやらせてもらっているけどね」
「と、統和機構ってあの、『ヴォーカロイド・プロジェクト』の……」

そう呟く菜由を見てレナードは少し驚いたような表情をした。

「へえ、いろいろ知ってるんだね。流石は……」


と、そこで言葉を切るレナード。多少の違和感を感じながらもレナードの次の言葉を待つ菜由。キルシェは相変わらずナイフを構えながらいつでも動けるように準備をしている。
少々子供の殺気が強くなってきたように感じられるからだ。



「統和機構は中々レベルの高い機関だったよ。おかげで色々と開発できた」

統和機構は評議会と同じくシステムによる統治機構であり、アメリカや欧州などをその拠点にする評議会に対し統和機構はアジアやオセアニア地域を拠点とするはず。
お互いが敵対している、もしくは不干渉をしているふたつの組織に両方属する?


わけがわからない。
レナードを睨み付けながらも菜由は必死で考えを巡らせている。レナードはそんな様子の菜由を見てクスリと笑う。


「まあ、今のうちに色々考えておくことだね。とりあえず今日のところは挨拶だけなので」

そういうとレナードは黒いコートを翻して菜由たちに背を向けた。

そして、
そして、


その瞬間を見逃すキルシェではなかった。


腰を落として足首にしまってある投擲用の小型投げナイフを左手に3本持ち、レナードの背中に投げた。

(こいつは近い将来菜由にとって強大な敵になる!今殺す)

あまりに不意をついた動き。
菜由は何が起こったのかわからず呆然。レナードの隣の子供?も完全に対応が遅れた。

誰もがその行動に不意を突かれたはず。それは狙われたレナードにしてもそうだった。




だが、

レナードの着る黒いコートがまるで別の生き物のようにひるがえって投げられたナイフを叩き落した。
今度はキルシェが驚愕する番だった。


(どういうことだ?レナードがコートでかわしたんじゃない。コートが「ひとりで」に動いてナイフを叩き落した??)


そして、レナードが余裕の笑顔で振り返ったのと同時に隣の子供?がキルシェに向かって飛び掛った。
右手に赤い刀身のナイフ。刀身の周りの空気が揺らめいている。

高周波熱伝導ナイフかっ!

キルシェは大きく動いて切っ先をかわす。それでも顔の近くに熱が届き、髪の毛の先がちりちりと焦げる。
かわしながら右足を振って右ハイ。だが子供?の左ハイで叩く。
子供?の顔を覆うフードがその拍子でめくれ、白い長い髪の毛が露になる。

それは子供ではなかった。
少女だった。


少女とキルシェは同時に後ろに飛び退り、距離をとる。
少女の殺気も覚えがあるはずだった。キルシェは一度戦っている。


「ベネッサ・ルイス…」
ジャングルで特殊部隊に拾われ、部隊によって育てられた戦場の少女。
あの廃墟での作戦でCQCを駆使しキルシェと互角以上の戦いを演じたあの少女兵士。


「久しぶりだな、キルシェ…」
ベネッサが更に一歩を踏み出そうとした瞬間、レナードの左腕がその動きを制した。


「レナード…」
「いいんだ、ベネッサ」

キルシェも菜由が腕を取って制している。

「菜由…」
「何してんのキルシェ!急に攻撃なんてっ!」



「ふふ、君たちも挨拶は済んだようだね。でも今日はここまでだ」
レナードがそう言うとベネッサは1回深呼吸をし、赤い熱伝導ナイフを腰にしまった。
キルシェもナイフをしまう。だがふたりはにらみ合うのはやめない。



「また会おう、君たち」
レナードがまた背を向けて手を振る。ベネッサはぎりぎりまでキルシェを睨み付けていたが最後にはレナードとともに背を向けた。
キルシェは殺気のまま、菜由は少しおびえた様子でその後姿を見送った。


「レナード・テスタロッサ……何者なの…」
菜由は二人の姿が見えなくなってから、そう、呟いた。



だが菜由とキルシェはまだ知らない。
この出会いがこの先の二人の運命を分かつことになるということを






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【2011/12/25 03:34 】 | Killshe's story | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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