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【2017/10/23 13:28 】 |
決戦前


女子セリエA第32節。
サン・シーロで行われるインテル対ローマの試合前日。
ASローマの選手たちは最後の練習に汗を流していた。この練習の後選手とスタッフはそのままミラノのホテルに移動する。







「代歩ちゃん」
ピッチサイドでドリンクを飲む代歩に声をかけたのは黒髪ポニーテールの森下茜だった。代歩は茜を見ると少し笑ってから右手に持つドリンクを茜に手渡した。
茜はそれを手にとりぐいと一飲み。それからふうと息を吐いて少し安心したように微笑んだ。

「気合、入ってるね随分」
「ん、ああ、まあな」
笑顔の問いに代歩は曖昧な感じで答える。
かつての恩師の言葉、そして千沙都の指摘が影響しているのだろうか。知らず知らずのうちに代歩のプレーにそれがあらわれているのか。

「ん、いいと思うよ」
茜はにこりと笑ってそう言った。そして代歩のとなりにすとんと腰掛けた。

大量に吹き出た汗で白いTシャツが肌に張り付いている。
今日も茜は眩しすぎるほど元気で快活に練習に取り組んでいた。
菜由に言わせれば、その快活すぎるのがある意味プレッシャーから逃げようとしていると捉えられているのか。


「なあ、茜」
「ん、なあに代歩ちゃん?」
茜は少し不思議そうな顔をして代歩の顔を覗き込む。代歩はアカネの顔を見ず、正面を向いたまま―



「無理、すんなよ」
そう言った。
茜は少し驚いた顔をして、それから代歩と同じく正面を向き両腕を組んで高く上げて体を伸ばした。


「無理、するよ」
茜がそう答えた。代歩は茜に顔を向けた。その横顔は笑顔だったが真摯な眼差しを正面に向けていた。

「だって、ナーシャは見たいって言ってるんだもん。『もうひとりの私』を。だったら―」
そこで言葉を切り、代歩に顔を向ける。そのまっすぐな視線が代歩に突き刺さる。
「無理、するしかないよね♪」

「でも、それじゃあオマエが―」
「大丈夫だよ」
代歩の反論を茜が笑顔で遮る。

「あの時の私じゃないよ、代歩ちゃん。私だって少しは成長してるんだよ」


柔らかい微笑み。
「あの時」というのが3年前のミラン戦だということを茜は理解している。理解した上で、目指している。


神の子


あの試合の後、茜にはそういう名前が一時期つけられたりもしたが、その後アスコリ戦の後半終了間際にちらりと顔を覗かせて以来、茜がそういう変化をしたことはない。
茜の中に眠るその獣は、未だ深い眠りの中なのか
それとも元々そんなものはいないのか。




ピピーーー
甲高い笛の音で代歩は我に帰る。
最近あまり聞かなくなったその独特の笛の音で代歩はすぐに悟った。
コーチである橘恵美が帰ってきたことを。
恵美の隣にはやはりいる。銀髪の少女、カミュ・ファルコーニが練習着姿で硬い顔をしていた。



「カミュっ!!」
茜はカミュに駆け寄り、その両手を握って笑顔。茜の笑顔を見たカミュも照れくさそうに笑った。
「怪我はもういいの?大丈夫なの?」
茜の問いにカミュは答える代わりに恵美のほうをちらりと見る。視線に気がついた恵美が代わりに答えた。

「治療は進めたわ。その成果を今から確かめるの」




誰の目にも明らかなほどやせ細ったBucchiiの指示の元、紅白戦のメンバーが決められた。
カミュは代歩や茜と同じレギュラー組に回された。

そして開始から10分。
数度ボールにタッチし、少しばかり走ったカミュが手を上げた。そして両手で×マークを作る。
それを見た恵美がカミュの元に駆け寄り、すぐさまその小さな体を背負った。



「痛い?」
ピッチサイドでアイシングを受けているカミュに恵美が問いかける。カミュは少し逡巡した様子を少し見せたが、恵美に向かって頷いた。
「全然走れなかった。ちっとも治ってないじゃんか」
カミュは瞳に涙を溜めながら訴えた。言葉を受けている恵美は黙々とマッサージしながらそれを聞いている。

「大丈夫よ、カミュ」
恵美が右足を擦りながらそう答えた。

「すぐ痛くなるのは予想済み。むしろ10分ももったのが驚きだわ。大丈夫、あなたの足は確実に治ってきている」
恵美はそういってから顔を上げ、カミュに向けて笑顔を見せた。

「でも、今晩は徹夜で治療だけどね」





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【2012/01/03 04:16 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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