忍者ブログ
  • 2017.06
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.08
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2017/07/25 09:28 】 |
桜花杯決勝戦模様その4 お互いのプライドで


「もう、ぽって、あんまり心配かけないでよ」
「ごめんかおちゃん、いい写真撮れそうだったからつい、なので」

広島極楽バタフライのジャージを着る塙かおるのとなりでセーラー服姿の沢渡楓は申し訳なさそうに肩をすくめる。だが膝に乗せた愛用のカメラ、ローライ35Sを持ち、いつでも撮れるように準備したりもしていた。

「お、悪い遅くなった」
そのかおるたちの後ろで不意に声をかけた男の声。振り返った瞬間、ぽっては顔に縦線を入れて口をかくかくさせていた。
「コーチ」
かおるがその男性にそう言い、男は軽く右手を上げるとかおるたちのところではなく、少し離れた水無月琴子の隣にどっかり腰を下ろした。琴子は不機嫌さを隠そうともしないでいる。

「Ryo-ta指導員。いくらなんでも遅刻しすぎですよ」
「だから悪いって言ってるだろ」

紫のスーツに身を包み、レイバンのサングラスをかけたこの男は現日本代表コーチであり、Bucchiiや捨井などと同期のRyo-ta。極悪FWとして現役時代は名を馳せ、Bucchiiなどと共にオリンピックの銀メダルを獲ったいわゆる「ゴールデン世代」の筆頭選手でもあった。

「うん、沢渡もちゃんと来てるんだな」
Ryo-taがもう一度かおるたちの方に視線を向け、それに気がついたぽってが縮こまっている。

「全く、ただの写真屋を試合観戦に同行させるなんてお金の無駄です」
琴子の言葉にRyo-taは少し驚いた顔をして琴子を見る。

「ああ、お前は知らないのか」
「なにがですか?」
琴子はいっそう不機嫌な表情を強めた。Ryo-taはもう一度ぽっての後姿に目を移した。


「あいつは、俺たちのかけがえのない宝物だ。沢渡って名前に覚えはないか?」
Ryo-taの言葉に琴子は少し考え、そしてはっとした表情で振り返った。







後半戦が始まり、DMSは相変わらず中盤後ろの水澤や楠瀬、もしくはバックラインからのサイドの展開を多用している。
サイドの攻守に強みを見せるSCMでもあるがこれだけ執拗に攻められるとそこを守る選手たちも疲弊していく。SCMキャプテンである本田飛鳥はハーフタイムで監督から受けた指示を頭の中で繰り返す。


「いい、向こうの狙いは明らかよ。サイドを執拗に攻めて中央のスペースを作ってそこからチャンスを作る。中距離では無敵のミドルを持つ巴が中央から殆ど動かないのがその証拠。勿論サイド攻撃をしっかり止めるのは重要だけど絶対にセンターを空けないこと」


重要になるのは飛鳥自身となるみ。ここのポジショニングに乱れが出ればそこを突かれるのは間違いない。
でも攻めるのも忘れちゃいけない。
両サイドの芹華と陽子の上がりを引き出すために自分たちがサイド攻撃のフォローにも回らなければいけない。
ギリギリのポジショニングの中でどうやって攻めを構築していくのか。
どこかでリスクを負わなければいけない。
飛鳥は神経をすり減らしながらも考えていた。


中央少し下がり目の場所でほむらがボールを受けた。相も変わらず楠瀬の早い寄せ。
ほむらはワンタッチで後方なるみに繋いで自身は前に向かって走り出す。なるみから右の芹華、そして芹華は一気に加速してサイドを駆け上がる。
が、DMS向井弥子がそれを阻む。
芹華は逡巡したが後ろのフォローの江藤和代は上がり控えめの選手であり、今も自重してバックラインの構築に参加している。芹華は舌打ちをしてから弥子を抜きにかかる。
が、そこはサイド職人向井弥子。いくらフランス帰りのテクニシャンである芹華とて容易に抜かせてはくれない。
一度二度フェイントから抜きにかかるがそれら全てを阻む。もたもたしている間に水澤や水谷のフォローが近くなる。

「こっちですっ!」
芹華は声のしたほうに瞬間的にパスを出す。
走りこむ飛鳥の足元に丁寧にパスが入った。


(リスクを負って、攻めるっ!)
飛鳥はワンタッチで前線にグラウンダーの速いパスを出し、ペナルティ・アークで宮崎都がそれを受ける。楔のパスを受けた都は後方からの扇ヶ谷の激しい当たりに耐えながらボールを後方に弾く。中央受けたほむらが逆の左にロングパスを出した。

左を走るのは岡野陽子。
前半の執拗な守備でかなりスタミナを浪費しているが元々水泳が得意でスタミナには自身があるほう。
多少顎があがる頃が最も動きがよくなるタイプの選手だ。だがクラブハウスを水着と銛姿でうろつくのはやめてほしいと苦情が(笑)

左サイドで受けた陽子はチェックに来る音無夕希を切り返してかわしてから右足でクロス。少し低めのボール、ニアに飛び込んだ影は

なるみだった。


その小さな体を懸命に伸ばしてのヘッド。芯を捉えたボールはゴール左隅に。
誰もがゴールと思った瞬間、そのコースを塞ぐ影。

ここまでを読みきった二見瑛理子が体を呈してシュートを防いだ。



「まずいっ!」
飛鳥が叫んだ。リスクを負った分完全に守備が手薄になっている。
このセカンドボールを絶対に死守しないとカウンターが来る。
ふらふらとあがるボールに飛鳥が駆け寄る。

だが、先にボールに触ったのは水澤摩央だった。


ボールをトラップした摩央は一瞬だけ飛鳥を見てにこりと笑うと一気に前線にボールを蹴りつけた。
まずい
リスクを負って守備的中盤の飛鳥になるみが両方前線に。芹華も陽子も、そして陽子の上がりを引き出すために中盤の中途半端な位置に珠姫が。
向こうも両サイドが下がって中盤底も守備しているが、ツートップと、トップ下の巴が残っている。

3対3



SCM陣内中央で巴マミが余裕を持ってボールを胸トラップ。前を向いた。
ツートップの風間こだちと佐倉杏子はすでに動き出している。
どちらにパスを振るか、それとも自身で行くか

が、その思考を寸断する影。
暁美ほむらがマミの眼前に現われた。

「いかせないわ」
「あら、だめよ」

マミが急加速。ほむらの前でボールをまたいでシザース。左に弾けて抜きにかかる。
が、ほむらもその動きに食らいつく。

マミは内心で驚愕する。
(半年前とは別人のような動き。その短期間でどこまで伸ばしたのっ?)

これこそが肉体改造の成果。
が、やはり攻撃に偏りを見せるトップ下とあれば守備では拙さが露見する。マミは冷静にもう一度切り返してhほむらの背中側を抜く。ほむらはバランスを崩しながらも左足を伸ばして足を刈る。が、それもマミはジャンプでかわし、


「佐倉さんっ!」
矢のようなスルーパスを前線に撃った。そしてその動きのまま前線に向かって走りこむ。
ほむらはその場で転倒、倒れこみながらその先を見据えることしかできなかった。






「やっと、きたかよっ!」
赤い髪の尾を翻しながら佐倉杏子がパスに反応、エリア内に侵入する。
だが杏子の動きに草薙忍が反応、そちらに向かう。

だが一瞬視界に前線に飛び込む巴マミの姿を見つけた。


(今赤髪を押さえれば止める自信はある。だがワンツーで返されたら?金髪をノーマークにしてしまう)



「忍さんっ!!」
声が聞こえた、よく通る大きな声がベンチから。



ああ、そうだったね




忍はマミの動きを無視して杏子に突っ込んだ。


杏子はマミからのパスを綺麗に受け、ゴールを見る。そして走りこむマミの姿を視界の端に捉えたが構わず右足を振り上げた。

シュート。

だがその瞬間、忍の足がコースに伸びてシュートを阻む。
ボールは忍の足に弾かれてタッチラインを割った。
杏子は信じられない風に目の前で安堵のため息を吐く草薙忍を睨み付けた。



「ナイスっ!忍さん」
大きな聞き覚えのある声に気がついた杏子は顔を上げた。そしてSCMベンチを見やるとそこには笑顔で選手たちに声援を送る美樹さやかの姿が。
さやかは杏子の視線に気がつくと楽しくてしょうがないといった感じでまた笑った。


そうさ、アタシはあんたとずっとコンビを組んでたんだ。だから知ってるんだよ。
あの状況だったらあんたはマミさんが見えようと見えまいと、パスはしない。絶対
生粋のストライカーのあんただからこそね



さやかは試合前に忍たちDF陣に杏子の特徴を丁寧に説明していたのだ。
だからこそあの瞬間にそれを思い出した忍は躊躇なく杏子に飛び込めた。




アタシは試合に出れないかもしれないけど、こうやって試合に関われるんだ。
それはチームを信じてるからこそだ。
アタシはあんたに負けるかもしれないけど、試合には勝つよ




さやかは更に選手たちを鼓舞するかのように声を張り上げる。隣のまどかもまた、大きな声を出していた。
それを横目で見る松原聖はにこりと笑う。
それこそが、チームとして戦う第1歩よ。忘れないでねさやかちゃん































「もしかして、沢渡って……」
琴子が乾いた声を出す。Ryo-taは軽く頷いた。
「ああ、その通りだ。あいつは俺たちオリンピック代表右サイド沢渡の娘だよ」
琴子は驚愕の表情のままぽっての後姿を見据える。そのぽってはまた、かおるの制止を聞かずにフェンスに乗り出して写真を撮っている。




「どうやら、カエルの子はカエルらしいんでな」
Ryo-taはそう呟いて椅子に深く腰を落とした



PR
【2012/01/03 10:14 】 | Others League | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
<<前日のスターティング | ホーム | 決戦前>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














虎カムバック
トラックバックURL

<<前ページ | ホーム | 次ページ>>