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【2017/04/24 00:52 】 |
桜花杯決勝戦模様その6 やるべきこと


「ほむらが……まずいわね」
美樹さやかからの報告を受けた松原聖はピッチを見やってから顔をしかめた。







「下がらないでよっ!アタシたちが守るからっ!!」
DFリーダーである桑原鞘子の大声を背に受けて、キャプテンである本田飛鳥はもう一度前線への侵攻を意識する。
少し離れた場所でポジショニングしている里仲なるみをちらりと見る。なるみも視線に気がついて飛鳥と視線を合わせると小さく頷いてから下がり目のポジションを取るように後ろに下がる。
さっきのカウンターは飛鳥、なるみ両方が前線に出たために数的不利を招いた。
鞘子は前に出ろと言うが、さっきのような形では今度こそ取り返しがつかなくなる。ここは飛鳥よりも守備に気の利くなるみを少し下がらせておくのが間違いがない。
飛鳥自身は攻守両方に備えられるように構える。

だが、それよりも気がかりなことがある。
トップ下、ほむらの動きが極端に落ちてきたことだ。

スタミナ切れ?プレッシャー?
いや違う。
右足を庇うような動き。


怪我??


ほむらはベンチのほうを見る。
テクニカルエリアに立つ松原聖が飛鳥の視線を見て小さく頷く。
やっぱりだ。
飛鳥は手負いのほむらのフォローをすべく、前に出た。






DMS水澤摩央からのロングボールを受けた右サイド向井弥子。すぐさま前を向いてドリブルを開始。
だが数歩でその動きが止まる。
全く躊躇せずに川添珠姫が向かっていた。
弥子は冷静に突進を切り返しでかわすように反転動作、だが珠姫はそれを読んで直進動作からトップスピードのまま反転動作にあわせる。そしてその動きのまま右足を弥子の股下に通して収めていたボールを弾いた。
一瞬でも足に触ればファウルになるかというプレーであり、事実弥子は倒れる振りをする準備も整えていた。

だが珠姫の足は正確にボールだけを射抜いていた。
ここで倒れればファウルを取られないばかりかシュミレーションを取られる恐れも。それよりも完全に抜かれてチャンスを作ってしまう。
弥子は弾いた先に動き出す珠姫のユニフォームに手を伸ばす。
掴んで引き倒す。イエローカードくらいは貰うだろうがそれも承知の上だ。

だが、手を伸ばしたその時、珠姫の体が更に加速、弥子の手は中を掴んでその勢いのまま転倒する。
完全にやられた。

これがヨハン・ファン・ハーレンが言わしめる、「世界最高峰のサイドプレイヤー」の実力なのか。


弾いたボールを珠姫が確保した瞬間、眼前に摩央が躍り出る。
珠姫は冷静にサイドライン際下がってきている丘野陽子に繋いで摩央を引き連れながらタッチラインの外を迂回するように走って陽子の前に。陽子はその珠姫の前方を狙うかのようにパス。
珠姫はその加速力で摩央を引き離しながらそれを受けた。

珠姫のオーバーラップからSCMチャンス到来。
歓声が唸りを超えて悲鳴に近くなる。




(ここだっ!)
ほむらは悲鳴をあげ続けている右足で地面を思いっきり蹴って前線に走る。
飛鳥の動き、そしてテクニカルエリアの聖の表情で怪我をしているのがばれている。これがほむらにとって最後のワンプレーなのは間違いない。


一文字茜の投入は、間違いなくほむらとのコンビネーションの良さを考えてのものだ。ほむらはそれくらいは理解している。
だからこそ


「暁美さんっ!」
不意に横から体をぶつけられてほむらの体が揺らめいた。
巴マミがここまで戻ってほむらのマークについていた。
併走しながら肩を押し当てる。意外に強い当たりに元々線が細く、しかも右足の踏ん張りが効かないほむらの体は容易にぐらつく。
マミの表情は強張ってはいるが、少し憂いを帯びている風でもあり、彼女もほむらの怪我には気がついているのだろう。


(もう無理はやめなさいっ!)
(うるさいっ!巴マミ!)
(無理をおして傷を広げればあなたの選手生命も―)


そんなことはわかってる。
普段の冷静なほむらであればすぐにベンチに報告、交代要請をしたことだろう。

でも、まだよ
私はチームの想い、聖の想いに何も応えてない。
このワンプレーで応える。応えたい。

倒れるのはそれからでもいい。



珠姫からマイナスのクロス。ファーサイド大きく飛んだクロスボールに飛び込むのは飛鳥。だが楠瀬が併走、胸トラップした瞬間に肩をぶつけてくる。
ぐらつきながらも中央にショートパス。

ほむらの想いはわかった。



思いっきりやりなっ!!





ほむらが飛鳥のパスを右足で受ける。瞬間痛みが脳天を越えていく。
マミの足が伸びる。痛む右足でボールを浮かせながら外にスライド、足をかわす。
マミがバランスを崩して倒れこみながらほむらのユニフォームを掴む。肩口当たりを掴まれたほむらは一気にバランスを崩して倒れこむ。

が、浮いたボールは目の前。



撃てっ!!!





右足を倒れながら横に振りぬいた。
瞬間、前線一文字茜がDFラインの裏に抜ける。

ほむらのボレーシュートは不安定な体勢ながらもゴール右隅に推進する。GKの香坂麻衣子が横っ飛びで超反応。左手を大きく伸ばす。

が、ボールは麻衣子の手をすり抜けてクロスバーを叩いた。
それを見たマミは安堵の表情。
ほむらは普段見せない微笑を浮かべていた。



「ドンピシャだよ、ほむらっ!」
跳ね返ったボールに飛び込む小さな影。
鉄子に瑛理子、由梨香とほぼすべての選手たちがボールに注目する中、茜だけがほむらのパスを信じて裏の飛び出しを敢行していた。

跳ね返りに右足をダイレクトで合わせる。ボールはゴール中央、ネットを突き破らんばかりの勢いで突き刺さった。


「…ほんとは、シュートだったんだけど…」
ほむらはそう言ってまた、微笑んだ。


後半26分、SCM先制点にスタジアムに歓声が沸きあがった。




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【2012/01/10 07:05 】 | Others League | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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