忍者ブログ
  • 2017.07
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.09
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2017/08/20 03:35 】 |
桜花杯決勝戦模様その8 美樹さやか


「そろそろ限界?……」
テクニカルエリアでピッチを見据える松原聖は誰に言うでもなくそう呟く。
視線の先の丘野陽子は必死に走るものの、後半開始当初のスピードと躍動は既に影を潜めている。
前後半とDMSの執拗なサイド攻撃に攻守両方を務めていた疲労がここにきて噴き出しているといった感じか。

逆サイド神条芹華はまだ余力を残している。両サイドバックも大丈夫。
ではやはり陽子を交代か。

そこでふと考える。
陽子に代えて紀梨乃を投入、なるみを左SBにして珠姫を前に出す。
いや、ここまで中盤を締め上げてきたなるみの効果は大きい。下手に紀梨乃に代えて連携に齟齬が生じたら取り返しのつかない状況になる可能性もある。

ではやっぱり……


聖は振り返って叫んだ。



「さやか、出番よっ!!」






「へっ?」
呼ばれたさやかは素っ頓狂な声を上げ、ベンチの選手全員から失笑をかう。聖も苦笑して首を振った。

「あら?出たくないのかしら?」
「いえ、出ます出ますすぐに絶対出ますっ!」
慌てたように叫ぶさやかにまたも選手たちから笑いが起こる。


ほどなくユニフォームに着替えたさやかがピッチサイドに立つ。
交代ボードが掲げられて、


8→14


陽子との交代だった。
さやかはピッチで陽子とハイタッチし、ピッチ内に駆け込む。それを見たキャプテン本田飛鳥は数度小さく頷いた。

(なるほど、さやかを入れるって事はこのまま攻撃的に押し切れってことだね……)

攻撃に主軸を置いたDMSは得意の3バックを捨てて残り時間を臨んでいる。それは守備ブロックに多少の不安ができているということ。
たったの1点を守りきれる保証もない。となれば…

追加点を取ってDMSの心を折る。

それが監督からのメッセージということだ。




「やっと、きたのかよ…」
前線にへばりついている佐倉杏子は小さな声でそう呟くと唇の端を吊り上げてニヤリと笑う。
さやかは杏子を一瞥するとすぐに陽子のいた左サイドに駆けていった。


「交代した美樹さやか選手は前線の選手ですね……つまり」
スタンドで観戦をしている広島の水無月琴子はそう呟いて隣のRYO-TAを見る。
「ああ、守るつもりは無いってことだ」
琴子の言葉を受けてRYO-TAはそう答える。琴子は予想通りの言葉を聞けて頷いたが、表情は訝しげだ。

「でも、無謀に思えますね」
DFを生業にしている琴子がそう考えるのは想像に難くない。残り時間はあと15分もないのだから、上手くさばいて前線でキープするのもひとつの方法として考えてもおかしくは無い。
だが、RYO-TAは薄く笑って首を振る。

「どうかな。この選択が無謀か、それとも英断かは試合が終わらないとわからないぜ。生きた試合での選択は無限だってことだよ」

意外にまともな答えを言ったRYO-TAの顔を見て今度こそ琴子は目を見張った。







この交代の意味を理解しているのはSCMの選手だけではなかった。

(守らずに行くってことだよね。それならウチにもチャンスはあるってことだね)
水澤摩央はそう考えながら弥子からのパスを受けてすぐさま前線巴マミに繋ぐ。そして楠瀬緋菜に視線を送ってから前線に走りこむ。緋菜は意味を理解して少し下がってセカンドボールに備えた。
受けたマミの眼前に里仲なるみが張り付く。マミはウチを真一文字に結んでボールを足元に納めながら後ろに下がった。

(隙が無いわ。しかもこの時間帯なのに全く運動量が落ちてないなんて……)

なるみの運動量とスタミナは恐らくTMリーグ内では5本の指に入るのではないか。更にサイドバックやセンターバックの経験もあり、守備の安定感がチームに貢献する度合いは大きい。
小柄だし、普段は馬鹿っぽい子供っぽい言動ばかりが目立つ彼女であるが、それでも代表に名を連ねると言うことは伊達ではない。

マミは下がりながら前線に走りこむ摩央にボールを出してそれは通る。摩央から最前線の安藤桃子へ、桃子は受けざま振り向いて強引にシュートを放つがそれは桑原鞘子がブロックした。

ふわりとあがるルーズボールを杏子がジャンプしながら胸トラップし、前を向いた。眼前には守備に参加した美樹さやかの姿。
杏子はまっすぐさやかに向かってドリブル開始。さやかも左足を前に出して半身の姿勢でそれを迎え撃つ。




暁美ほむらはドクターの治療を受けながらじっとピッチを見据えている。
決勝戦前にほむらは松原聖に美樹さやかを起用しないように進言した。そのことを思い返している。


「ええ、あなたの言いたいことはわかったわ。私もあなたの意見には概ね賛成よ」
「では、さやかは起用しないようにお願いします」
「でもそれは約束できないわね。ほむら、あなたはひとつ思い違いをしてるのよ」
「…思い違い?」
「ええ、確かに今の状態のさやかを使うわけには行かない。でもね、さやかの潜在能力の高さは疑いが無いのよ」
「それは……」
「さやかが本来の力を発揮できる状況であれば、私は躊躇無く送り出すわよ。だって…」


「美樹さやかの爆発力は、あなたの比じゃないんだから」







杏子がボールをまたぎながら上体を振る。さやかは杏子が右に抜くと決め付けるように動くが杏子は反対に動く。

(まだまだだな、さやかっ!)

が、抜いた瞬間草薙忍の足が伸びてボールごと転倒。笛は鳴らず忍が倒れこみながら左にボールを叩いた。さやかはそれを見た瞬間前線に向かってダッシュ開始。左で受けた川添珠姫からさやかの足元に綺麗にパスが通った。
水澤摩央が戻りながら後ろから、前から弥子が迫り来るがさやかは中央相沢ちとせにパスを出して更に前に走る。
中央受けたちとせにやはり緋菜がつく。ちとせは先ほどのファウルとは違い今度はワンタッチで逆の右に流す。受けた芹華はダイレクトで前に出し、反転したちとせがワンツーで受けた。
ちとせから中央に向かって走るさやかにパスが出る。さやかは走りながら受け、併走する弥子、前から迫る扇ヶ谷鉄子に構わず右足を振りぬいた。
40メートルほどのロングシュート。だが大きく枠を外れたシュートはクロスバーの遥か上を通過していった。



「挨拶代わりのシュートってところかしら、美樹さやか」
「そうだね、さやかちゃんかっこいいね」

まどかの言葉にほむらはあきらかに動揺しながらも、ピッチ上で不適に笑う美樹さやかから視線を外すことは出来なかった。




後半35分を回り、いよいよ試合は佳境に突入する




PR
【2012/01/16 04:39 】 | Others League | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
<<桜花杯決勝戦模様その9 四肢を投げうって | ホーム | 桜花杯決勝戦模様その7 有終の美を飾れ>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














虎カムバック
トラックバックURL

<<前ページ | ホーム | 次ページ>>