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【2017/05/24 22:25 】 |
客席のひとたち


「駄目だ」
むっすりとした表情の少女を前に女子ブンデス、ドルトムント所属の咲野明日香は首を振った。





「いやさ、茜ちんにチケット貰ったからお礼と試合前に激励をって…」
「駄目だ。激励なら試合の後にしろ」
「いやいやいやいや、試合終わったら激励意味ないし」
「では諦めろ」
「だっかっらー」

明日香と少女、キルシェ・アーカイラムとのやり取りは不毛を極めていたが、やがて折れた明日香はすごすごとASローマ控え室前を後にする。


スタジアムメインスタンド、ちょうど中間地点の席。
非常に見やすい席だと感心しながら席番号を見つけると隣には見知った日本人の顔が。

「よ、明日香」
「菜由さんだ、ひさしぶりー」

明日香もLCC契約選手と言うことでその社長である菜由と面識はある。笑顔で二人は握手。

「そうそう、優勝おめでとう。いやー所属選手がタイトル獲ると色々と嬉しいのよねー」
「色々って、また金勘定ですか(笑)」
「またってなによ(笑) ま、ぶっちゃけるとそれも大きいけど、それよりも喜んでる姿は見てて嬉しいのよ」
菜由はそう言って試合前、まだ人のいない緑色のピッチを見下ろした。その横顔を眺めながら明日香は微笑んだ。

「そうそう、菜由さんとこの、キルシェちゃんだっけ?あの子ロッカールーム前で仁王立ちして人払いやってたよ」
すぐに微笑から頬を膨らませた表情に変えると明日香は菜由に問い詰めた。
「ああ、ローマサイドからお願いされてね。キルシェなら適任だから」
「茜ちんの友達だって言っても、『駄目だ』の一点張りでさー融通なさすぎ」
「悪かったわね。どんな人間も入れるなってお達しだったからね」
「ま、試合前だし集中したいのかな…」


そういうことを話しているとまた日本人の女性が。
その女性の顔を見た明日香はぱっと顔を明るくさせた。
「こんばんわ、お久しぶり」
「恵壬さんだーひさしぶりー」

明日香は真後ろの席に陣取ったスペインリーガ、ヴァレンシア所属の佐野倉恵壬とハイタッチを交わす。そして恵壬の影から松葉杖を持った女性の姿も。

「ふう、イタリアは遠かったわよ」
アメリカギャラクシー、LAギャガン所属の藤崎詩織も一緒だった。菜由も振り返って詩織に微笑みかける。
「詩織、怪我はどう?」
「どうもこうもないわよ。アンハッピートライアングルで今季は棒に振ったし、来季の復帰も怪しいわ」
相変わらずの美しい美貌を歪めながら詩織は不機嫌そうに呟いた。
詩織は今季割に早い時期に試合中の怪我―内側側副靭帯損傷、前十字靭帯損傷、半月板損傷の3つを同時に痛めるアンハッピートライアングル―で戦線離脱。結局1シーズン全て治療にあたっていた。
来季の復帰も不透明で、当然ダイヤモンドカップアジア予選、そして本線の出場も危ぶまれている。

「まあ、正直もういいかなって思ってるんだけどね」
「もういいって?」
菜由が不審そうな顔でそう聞くと詩織はさっきとは違い、柔和な微笑を見せる。
「ギャラクシーで4年、ダイヤモンドカップも2回出たし、あとは後進に道を譲ってとか」
「それって……」
「結構稼いだしね。老後も困らないくらい」
詩織はそう言ってにっこり笑った。


しばらく無言の時が続き、耐え切れなくなった明日香が顔を上げた。

「そ、そういえばみんな茜ちんのご招待だよね?いったい何人呼んでるんだろねー」
「さあ?でも結構な人数のチケット確保してたからねー」
と、菜由は斜め上の席を指差した。明日香が指差した方向に顔を向けると一瞬でその顔が蒼白になった。


「はーい♪、みんなゲンキー?」
陽気なベルギー人のリーフデさん。となれば隣にはいつも通り、あまりにいつも通りの無表情の日本女子代表監督ヨハン・ファン・ハーレンの姿が。
ハーレンは明日香たちのほうに顔を向けると、しばらく全員を注視、すぐにピッチに顔を向けた。勿論その間に表情の変化は一切なし。隣のリーフデさんは苦笑していた。

「あの子も節操ない呼び方するわね」
ハーレンの顔を見て一瞬で不機嫌さを取り戻した詩織が呟く。

その時だった、7割ほど埋まったスタジアムからわっという歓声が沸き起こる。
練習のため、ピッチに選手たちが出てきたのだ。

キックオフ1時間前のことだった



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【2012/01/24 23:16 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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