忍者ブログ
  • 2017.04
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.06
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2017/05/24 22:29 】 |
決意表明


「ナユ、戻ったぞ」
キルシェの声に菜由が振り返る。
と、菜由の視線にはキルシェの姿はなく、かわりに大柄な男性のお腹が眼前に飛び込んだ。


「ハッハー、久しぶりだなナユ、それにシオリにエミもー」
大きなお腹を揺らめかせ、キルシェを肩に担いだ初老のイタリア人。男性を見た瞬間菜由の顔がほころんだ。

「ダンテさんっ!アントニオ・ダンテ監督っ!」
「ハッハー、私はもう監督じゃないぞナユ。モリシタに招待されて久しぶりにスタジアムまで足を運んださ」
キルシェを肩から降ろしたアントニオ・ダンテは大きなお腹にみあった大きなお尻をシートに埋めた。

「ナユ、このおっさん面白いな」
「キルシェ、おっさんじゃないのよ。元日本女子代表監督のダンテさん」
「ハッハー、いやもうおっさんだよ私は」

失礼な事を言われても全く気にしない感じでアントニオは豪快に笑った。



ピッチの喧騒は段々とトーンを上げていき、暴発寸前の様相を呈していた。




関係者控え室そばの男子トイレ。
女子サッカーの試合ということで関係者も女性が多く、このトイレにはあまり人がくることがなかった。
洗面台に鮮血がほとばしる。
ローマ監督Bucchiiが両手を洗面台に乗せて激しく息をついている。

「まだだ、まだだ……もってくれよ…」
搾り出すような呟きが室内に響いた








ASローマロッカールーム。
着替えを終えた選手たちはしんと静まり返っていた。
「なんだよー今日はずいぶん静かだなー」
サンド・フィオーリが努めて明るい声を出したが誰も答えず。サンドは舌打ちをしてベンチに腰掛けた。
隣に座っているカミュ・ファルコーニは真剣な顔で右足首のテーピングを巻きなおしている。
さっきまでの練習でも痛みはなかった。だが恵美の言っている通りならば前半最後まで保たないと。

少しでも長く、全力で

そして自分が出ている間に試合を決めたい。
どこまでやれるか。
どれほどやれるのか。




茜は壁に向かって手をつき、目を閉じている。
集中しているのか。

ロッカールームの扉がノックされ、開かれる。
コーチである橘恵美と監督Bucchiiが入る。恵美は部屋内の雰囲気に顔をしかめ、Bucchiiは苦笑した。


「おい、何だお前ら。始まる前から負けたような顔してんじゃねえよ」
Bucchiiは全員を見渡し、手を数度叩いて明るい声を出した。そして全員が顔を上げ、Bucchiiを注視した。


Bucchiiは軽く咳払いをし、もう一度全員を見渡して笑顔を見せた。
「いいか、確かにインテルは強い。もうどうしようもないってくらい強い。そんなのは俺も知ってるしトトのオッズもインテルばっかりだ」
と、軽いギャグを飛ばしたつもりだったが全員真剣な表情でギャグだと理解されなかったようだ(笑)
Bucchiiはもう一度咳ばらいをした。

「だがな、ここまで追いすがったお前たちだって強いんだ。それは認めろ、自分自身を認めないとこの先は見えないぞ」


「イタリア女子セリエの中でも最強クラスのインテルとスクデットをかけた試合ができるってのは人生にそう
あることじゃないかもしれないぜ。だから……」


「楽しめ、ですよね」
立ち上がったのは森下茜。笑顔をBucchiiに向けてそう言った。

「そうだ。プレッシャーも恐怖も全てを楽しめ。今日の試合は二度とないんだからな」
Bucchiiは頷いて、最後に言葉を締めた。そして恵美を連れ立って部屋を出て行った。


残された選手たち。まもなく係員が入場時間を知らせる。
キャプテンのジーナ・デル・サルトがゆっくりとした動作で立ち上がる。ショートボブの髪がゆったりとした動作に合わせて揺らめいた。


「行こうか。ミステルは私たちを『強い』って言ってくれた。私もそれを信じたい。証明してやる。だから」



「勝ちに行くぞ」
そこまで言ってジーナは身を翻してロッカールームを出る。
続いてやけに真剣な表情のプレシャス・デーデがキーパーグローブを数度叩いて気合を入れてから後に続く。
キッカ・コスタクルタは無言で数度頷きながらそのあとを、パウラ・ファウネルは苦笑気味の表情で続く。
「にゃはは、みんな気合入れちゃってまあー」
と言いながら顔を上気させているサンド・フィオーリ、そのあとにローザ・ベルガメリが続く。
すたたたっ、
その場で足踏みし、足の状態を確かめたカミュ・ファルコーニがいつになく真剣な表情で続く。オーラ・サネッティは体を伸ばしたりしながらリラックスした状態をアピールしながら続く。
「なあ、手繋いでこうぜアギーちゃん」
「断る」
そんなことを言い合いながらリルハ・イルハとアギー・バックが出て行く。

そして控えのビショップやイルマもそのあとに続いていく。ロッカールーム内に殆ど人が消えた。残っているのは森下茜と清水代歩だけだった。



「ね、代歩ちゃん。ちょっとギューってして」
茜は笑顔を見せて両腕を広げた。代歩は苦笑しながら茜に近づき、その華奢に見える体を抱きしめた。

「ね、早くピッチに出てきてよね。待ってるんだから」
「ん、ああ」

抱擁しながら日本語で言葉を交わすふたり。
そして、並んでロッカールームを出た。








入場口には既にインテルの選手は勢ぞろい。ローマも茜以外は整列を終えていた。係員の誘導に従って茜は列の最後尾についた。
インテル最前線のナスターシャは振り返って茜の様子を見てからすぐに前方に視線を移した。
係員の指示で両チームがゲートから歩き出す。
スタジアムに大音量の音楽が鳴り響き、そして観衆の声援が音楽をかき消すかのように溢れ出した。





PR
【2012/02/05 23:40 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
<<第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 1 キックオフ! | ホーム | あ、結局1月中のキックオフに間に合わなかった…>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














虎カムバック
トラックバックURL

<<前ページ | ホーム | 次ページ>>