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【2017/10/21 23:02 】 |
第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 13 万雷の拍手と涙の跡


「おい、橘」
テクニカルエリアのBucchiiが隣にいるはずの橘恵美に顔を向ける。
だが、恵美は既にピッチに向かって走り出していた。

主審の素早い指示で担架が運ばれ、場内は異様な雰囲気に包まれていた。






「リルハ、リルハっ!」
いつもは冷静沈着、感情を殆ど表に出さないアギー・バックが今にも泣き出しそうな顔でうつ伏せに倒れているリルハの元に駆け寄った。
そして抱きかかえようと右手を出したところでその手を掴まれた。掴んだのは先ほどリルハと交錯を演じたイリノア・メッサーラだった。
イリノアに振り返ったアギーは先ほどと一変、噛み付きそうな表情。

「何をっ!!」
「落ち着いて。頭を打ってる、動かしちゃ駄目よ」

掴まれた腕を振り払おうともがいたがイリノアのその一言でぴたりとその動きが止まる。
担架を持った救護班が現場に駆け寄り、頭や首を動かさないよう慎重に体を起こして担架に乗せる。


担架は意識が戻らないリルハを乗せ、ゆっくりと慎重にピッチから運ばれる。
客席からぱらぱらと拍手が聞こえ、その音がやがて伝播するようにスタジアム全体に響き渡っていく。
万雷の拍手、これはリルハ・イルハの勇気あるプレーに対する拍手であり、この時ばかりはロマニスタもインテリスタも同じような気持ちだったのだろう。



インテルのゴールキックで試合再開。
イリノアが大きく蹴りだし、センターサークルでフィアッカ・マルグリットが胸トラップしたところで前半終了の笛が響き渡った。

結局前半はインテル2点リード。最後のプレーも得点に結びつかず、ローマはカミュに加えてリルハも失うという絶望的な状態。
俯いたままのアギーの肩をジーナ・デル・サルトが優しく抱いてロッカールームに誘導する。
カミュ・ファルコーニも茜の肩を借りながら右足を引きずってピッチを後にする。
選手たちがロッカールームに引っ込むと、両チーム控え選手たちがボールを持ち出してパス練習などを始めた。ただ、そこに清水代歩の姿は無かった。










「余裕だね」
「ああ、あとはこれできっちり守っちゃえばアタシたちの勝ちだ」

インテルのロッカールームは明るい雰囲気。
選手たちは口々にそんなことを口走っている。だが


「それじゃ駄目よ。最初に言ったでしょ、髪の毛ほども油断するなと」
多少弛緩しかかっていた雰囲気をナスターシャが一蹴した。

「でもさ、あのファンタジスタはもうポンコツだし、小五月蝿いFWも潰れた。言っちゃ悪いがもう楽勝じゃ…」
「そう思うかしら?」
ナスターシャが睨みつけるとセレニーナ・ドミンゲスは黙った。ナスターシャは今度は全体を見渡した。

「いい、確かに有利な状況だけど油断だけは駄目。まだアカネも本来の力を出してないし、それに」
そこでナスターシャは言葉を切る。

「カミカゼ・アタッカンテの清水代歩が出てくるはずよ」

それを聞いたセレニーナ・ドミンゲスは神妙な顔で頷いた。
















一方、ローマのロッカールームはまるで葬式のような雰囲気だった。
前半で2点リードを許し、勝つためには最低3点取らなければいけない。しかも頼みの綱のカミュは右足の負傷が再発してもう動けない。リルハも病院に直行してしまっただろうから、このあと代歩が入ってもいつも通りの得点力は期待できない。
更にあのフリーキックをもう一度決められでもしたら、勝利は更に遠のいてしまう。

完全に打つ手なし、の状態。



ノックの音がし、Bucchiiと恵美が並んでロッカールームに入ってきた。
「リルハさんの意識が回復しました」
開口一番、恵美の言葉に選手たち全員が安堵のため息を漏らす。特にアギーは俯いたままポロポロと涙を零していた。

「ですがゴールポストに頭を強打していますので病院で精密検査を受けていただくように手配してます。なので」

「ということで清水、後半頭から行くぞ」
恵美の言葉を受けてBucchiiがそう宣言。前半途中からアップをしていた代歩は十分温まった体を起こして立ち上がった。

「それと、カミュもここで交代。出るのは……」
「嫌だっ!!」
Bucchiiの言葉を遮る大きな叫び声。カミュが肩を震わせて叫んでいた。

「おいおい、まともに走れもしないくせに……」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!」

カミュは力の限り叫び、勢いよく椅子から立ち上がった。その瞬間足の踏ん張りが効かずにふらつき、茜が慌ててその体を抱きとめる。カミュはその姿勢のまま、Bucchiiを睨みつけていた。


「まだ、アタシは何もやってない。チームのために何もやってない」
その真剣な、真摯な眼差しのカミュを目を見開いて見据え、それからBucchiiはくくっと含み笑いを漏らした。
カミュは、今度は恵美に向かってその眼差しを投げつけた。

「エミ、何とかならないか?あと少しだけでも走れるように、ならないか?」


恵美は首を振って大きなため息。下を向いて少し考えた後、顔を上げてこう言った。


「何とか、ならなくもないわよ」




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【2012/03/01 07:57 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0)
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