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【2017/07/26 19:42 】 |
第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 24 覚醒



「でも……」
カミュ・ファルコーニの顔を心配そうに覗きこみながら茜は遠慮がちに呟く。
カミュは掴んだ茜の手首に更に力をこめた。

「やれるって、言ってるだろ……」


歩くことも出来ない激痛。
痛みの他には何も考えられないような状態。
確かにピッチに立てる、いやすぐにでも病院に直行するレベルだろう。

改めてカミュの顔を覗きこむ茜。そして見つけてしまった。

憔悴しきった顔だったが、その瞳だけは爛々と輝いていたことを。





茜は少し考えてから掴まれていないほうの左手でカミュの右手を取った。自然に両手を合わせるような格好になり、ふたりは向かい合う。

「わかった。カミュがそう言うのならそうして。でもね……」
そこまで言ったところで茜の表情が優しげなものから一気に真剣な表情に変わる。


「でも、ピッチにいる以上、私はあなたをあてにするよ。それでもいい?」


その言葉にカミュは深く頷き、ふたりは手を離した。




(でも、どうする…………?)







その後試合はインテルが押し返す展開となる。
攻めの中で勢いを見出すローマだったが、その攻めのポイントになるカミュ・ファルコーニが完全に使い物にならない段階でローマの攻撃のビジョンは著しく狭まることになる。
それが積極性を失わせ、結果攻撃を主軸に移したインテルの波状攻撃を受けることになる。


「ミステル!早くカミュをピッチの外にっ!」
テクニカルエリアで橘恵美は監督であるBucchiiに強い口調で進言していたが、当のBucchiiに動く気配は無い。

「ミステルッ!」
「いや、確かにそうなんだがな……」
Bucchiiはばつが悪そうに頭を掻いている。

「ピッチに立つ選手たちがアイツを残すって決めたんだ。それを外野の俺たちが覆すのもどうかなって思ってさ」
「外野とかそんなのどうでもいいですっ!早く治療しないとあの子の選手生命が……」


と、ここで客席の大歓声がふたりの会話を遮る。恵美とBucchiiは同時にピッチに目を向けた。
右のミランダ・ネロからのクロスをカーリー・コンティが頭で合わせたシュートだったが、クロスバーに直撃して大きく跳ね返ったところだった。




(どうする?!)
エリア外まで大きく跳ね返ったボールを追いながら茜は思いを巡らせている。
(今は、カミュの力を期待できない。だからってこのまま攻められ続ければいつかは破られる)

が、そのボールに先に追いついたのはフィーナ・ファム・アーシュライト。茜が厳しいチェックに行くがさらりと切り返すと正面にパスを出した。受けたのはナスターシャ・シルベストリ。そして高々と掲げられた右手の指が複雑に動く。


(どうする?どうすればいいの?どうすれば…………)
































(どうする!?)















ジーナがチェック。だがナスターシャの右足が早く振られた。
左へのショートパス。受けたエステル・ヴァルディオラがダイレクトで返してワンツー。ジーナをかわしたナスターシャがペナルティ・アークから更に左に深く出す。
エリアの角でフィアッカ・マルグリットが受けてワントラップ。ローザが突っ込む前に右足で浮き玉をエリア内に放り込んだ。

その落下地点を完璧にキープしたカーリー・コンティが跳んだ。
「今度こそっ!」
キーパの動きもDFの動きも完全に把握し、それら全てが止められない位置に正確に、強く叩く。
これがベテランであるカーリー・コンティの仕事。まさに「職人」と言えるほどポストプレーと空中戦を続けてきたからこそ出来る。
その職人の側頭部が完璧にボールを捉え、撃つ。ゴール右隅に打たれたヘディングシュートはデーデ、パオラ、そしてキッカも反応できていない。




決まった。










誰もがそう思った。
ロマニスタの中には決定的な敗北を見せ付けられるシーンに顔を覆う者も少なくなかっただろう。
が、撃たれたシュートは大きく跳ね返り、またもエリア外に飛んでいた。
デーデが驚愕の表情で顔を向ける。ゴールポストを掴みながら体を振り上げ、右足でシュートをクリアした黒髪のポニーテールが揺れていた。
ポストから手を離して着地、その瞬間両足が激しく芝を刈り取り、その姿が前方に消えていた。

「な、なんだあれ……」
デーデにわかったことは、その動きは常人を遥かに超えているということだけ。
まるで、サバンナで獣が走り去ったかのような感覚だった。


クリアボールはエリアを超え、ナスターシャの頭も大きく超えた。
フィーナがそのクリアボールの落下点に向かって走る。が、ボールが落下する前にゴール前から走りこむ人影が空中でボールをカット。胸トラップでボールを落としてフィーナの前に正対した。
フィーナは表情一つ変えずにボールを奪いにいく。攻めているとは言えセンターバックはきちんと守備ラインを形成し
ているし、バニア・カモネージも戻りかけている。何よりここでボールを奪えればチャンスが大きく広がる。

が、足を出したフィーナだったがくるりと切り返され、抜かれる。
あまりにあっさりと抜かれた。
別に難しいことをされたのではない。奪いにいくフィーナとボールの間に体を割り込ませながら切り返して抜いただけのこと。

ただ、その動きの速度が尋常ではなかった。

初めて顔を歪めてフィーナはその後姿を凝視する。
背番号19。黒いポニーテールの少女は既に右足を振りぬいていた。





茜は左サイド深くにロングパスを放っていた。既に走り出したオーラ・サネッティを狙ってのものだったが。その中でオーラの表情が歪んでいる。

(う、これ届くのかよっ!!)

あまりに厳しい位置へのパス。オーラは全速力で走りながら最後は大きく右足を振り上げて足から飛び込むようにボールに飛びついた。右足つま先に僅かにボールが触れ、ギリギリで確保できたオーラはゴール前を見据える。
DF二人を引き連れながら清水代歩が走り、ボールを要求する仕草を見せる。

(速攻、なら……!)

オーラは2~3歩進んですぐさまゴール前に大きくボールを蹴りこんだ。だが、少し大きい。
代歩がセレニーナ・ドミンゲスと競り合いながらジャンプするがボールはその上空を通過。ファーの位置に動いたカレン・アダミッチが余裕を持ってボールに向かったその時、そのボールに猛然と向かう姿を発見。

茜だった。
落下するボールに向かって茜がジャンプ。カレンもそれを止めるがごとく同じタイミングでジャンプ。
先にボールを捉えたのは茜の頭だった。

(なんだと!頭ふたつ分も高いなんて……!?)

ゴール右隅に飛ぶヘディングシュートだったがイリノア・メッサーラが横っ飛びで弾いてゴールラインを割る。
スタジアムの歓声が大きく唸りをあげる。

「どんまい、あかn……」

肩で息をする茜の背後から代歩が近づき、肩を叩いた瞬間、ばちっと瞬間的な激痛が手に広がった。
慌てて手を引いた代歩。手のひらが痺れている。
静電気?

茜は代歩に顔を向けることもせず、ただ何かぶつぶつと呟いていた。








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【2012/04/10 01:38 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0)
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