忍者ブログ
  • 2017.06
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.08
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2017/07/25 09:34 】 |
第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 27 一歩を速く


後半25分を過ぎて、次に動いたのはインテルのほうだった。
前後半通じてアップダウンで運動量を見せ付け続けた右サイドバックのミランダ・ネロを下げて黒髪おかっぱの小さな少女、ミア・クレメンティスをピッチに送り出した。

ミア・クレメンティスは下がるミランダとライン際で抱き合ってからピッチに走り出し、フィーナの姿を見つけると笑顔で手を振った。

「姫さまー、姫さまー!」
このミア・クレメンティスはフィーナと同じスコットランド人であるが、肌の質感などを見ると明らかに東洋系を思わせる。
元々この貴族であるフィーナお付のメイドであったが、主人が女子サッカーに興ずるのを見て一緒に参加。現在に至るというわけだ。
攻撃力に強みを見せるミランダ・ネロに比べて攻守両面によく気が利く選手であり、ミランダとスタメンを分け合う存在。
ただどちらもまだ若いためかペース配分などで難があり、両者ともフル出場することは稀だった。




「どうだ、様子は?」
ミア・クレメンティスの交代時期を合わせる様にピッチサイドにBucchiiが戻ってきた。
少し不機嫌そうな表情で振り返った恵美だったが、襟元に少し残る血しぶきを見つけると何も言わずにピッチに目を移した。

「右のミランダとクレメンティス選手が交代ですね。バランス感を整えるのが目的…?」
「だな。どうやらベンチは1点差を逃げ切るつもりらしいが、果たして」
Bucchiiはそこまで言うと中央で歯噛みするような顔をしているナスターシャ・シルベストリを見据えた。

(ナスターシャ、お前の考えは違うみたいだな)

ベンチサイドと実際に試合をしている選手サイドの意思の齟齬。これが付け込めるチャンスになるかどうか――




バックライン、カレン・アダミッチから前線に向けたロングボールが放たれるが素早く落下地点を確保した森下茜がそれを胸でトラップして奪う。エステル・ヴァルディオラのチェックを軽い動作でかわしながら右に速いパス。アギー・バックが慌てて受けながらワンツーで戻す。戻ったパスをダイレクトでもう一度右に叩く。
右サイドアギーの後ろを駆け抜けたローザ・ベルガメリを狙ったものであったがローザはパスに追いつけずにタッチラインを割った。




「まずいわね」
観戦席の藤崎詩織。相変わらず頬杖を突いたままの姿勢でそう呟いた。
「そうですね。森下さんが加速したのはいいですが、それが悪いほうになってきてますね」
詩織の言葉に佐野倉恵壬が同意した。詩織の前の席で試合を注視している咲野明日香も無言で頷いた。

茜がどういう原理かわからないが加速状態になっている。
それ自体はローマにとって喜ばしいことではあるが、組織としては突出した存在は害悪となりうる。
たとえば軍隊における部隊というのはそのメンバーに突出した人材を置かない。
個々の能力差に違いがあると、作戦行動において支障が出るからだ。
力を均一に近づけることによって、たとえば作戦中部隊の移動で距離を稼いだり突入タイミングを測るときに有利になる。
先のミラン戦やアスコリ戦において茜がその力を遺憾なく発揮できたのはミランが個人の力をベースに戦術を組み立てるチームだったことや、試合の中で茜自身が敵味方問わず中心となって動いていったということがある。
アスコリ戦では終盤間際でリードを守るために守備一辺倒になっていた。
お互いバランスの悪い中で茜に相対していたのだ。

だがインテルは違う。
元々組織力に強みを見せるチームであり、茜自身がいくら神の力を行使して突撃を図っても所詮11人を一人で突破などは出来ない。
だからこそ周りを使うのだが、そこで力の違いが浮き彫りになってしまうのだ。














「……って思ってくれればいいんだけどな」
「でも、確かに森下さんが浮き気味ですよ」
テクニカルエリアでBucchiiと恵美が言葉を交わしあう。Bucchiiはふふんと鼻を鳴らすと右手で顎をつまんだ。

「それくらいの下ごしらえを出来ないで監督なんかやってないぜ」
Bucchiiは自信満々にそう呟いた。





(速いな、アカネが)
左サイド、オーラ・サネッティは逆の右サイドでインテルが突破を図る中、底からのカウンターを意識している。

さっきの茜のパスは確かに速かった。追いつくのが精一杯でアーリークロスの精度も欠いてしまった。
だがわかる。だからわかる。


左サイド深く攻め込んだバニア・カモネージだったがローザとアギーに囲まれてボールを奪われる。
そこかからアギーがセンターのジーナ・デル・サルトに送ってジーナがダイレクトで茜に出す。


(……ここだっ!!)


動き出しを一歩早く
茜は必ず出す!








「森下が加入した当初、俺はアイツにローマの戦術全てを叩き込んだ」
Bucchiiは呟いている。恵美はピッチとBucchiiの顔を交互に見ながらそれを聞く。

「そうすることによって早くチームの中に馴染ませるということもあったんだがな。本来の目的はそこじゃない」




茜が反転。左のオーラ・サネッティに長いパスを出した。




「チームの中心はカミュ・ファルコーニ。キャプテンとしてチームをまとめるのはジーナ。そして戦術の中心は森下になる様に、選手全員を鍛えてきた」


オーラの俊足は併走するミア・クレメンティスをぐいぐい引き離す。ロングパスの落下点はやはり厳しい位置
でも、早い動き出しが生きている。オーラは利き足の左足を振り上げてトラップ。そのままサイドを駆け上がる。



「選手たちは森下の動きを無意識に意識するようになる。森下が加速すればそれに合わせて動き出しのスピードも上がる。戦術の中心だからな」

Bucchiiはひとつ頷いてから口元を歪めて笑う。

「勿論、森下だけじゃなく、全員の力の底上げが必要だったが、それは試合を繰り返すうちにどうにかなると確信してたんだぜ」



オーラからのクロス。二アサイド飛び込んだ代歩がヘッドを打ち込むがコースに体を投げ出したセレニーナ・ドミンゲスのわき腹に当たってコースが変わる。イリノア・メッサーラが左手1本でボールを掻き出したがそのこぼれ玉に茜が飛び込んだ。
ダイレクトシュートを放ったが更にコースに足を入れたナスターシャによって阻まれた。

ボールは転々とゴールラインを割った。
芝生に腰を下ろしたままナスターシャは茜をにらみつける。不意にその表情が緩んで笑顔になる。
ナスターシャは立ち上がって尻についた芝を掌で叩いて落とした。


「いいわね、アカネ。あなたも凄いけどローマの選手全員があなたに近づいてる」
「そうだよ、ナーシャ。なんたって私の頼もしい仲間たちなんだから」
ナスターシャの言葉に茜も笑顔で答える


「でも、負けないわよ」
「ううん、勝つよ」

すれ違いざま、茜とナスターシャは右手を握り合った。
PR
【2012/05/13 10:55 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0)
<<第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 28 彼女の選択 | ホーム | 第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 26 鳥の目>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














<<前ページ | ホーム | 次ページ>>