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【2017/05/24 22:30 】 |
第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 33 不和の兆し




(ここに、くるっ!)

清水代歩はそのパスを直前に感知していた。

セレニーナ・ドミンゲスの激しいチャージをいなしてくるりと反転、右手を振りながら茜の足から放たれたスルーパスに反応し、軌道に右足を振り上げた。





速く、鋭いパスだがレズリー・ロピカーナが出すスルーパスほどじゃない。





が、インパクトの瞬間にほんの一瞬、視界を遮る黒い影。

代歩は気にせずに右足を振りぬいたが、そのシュートは頭上にホップしながらゴール右ポストを掠めていった。













そのプレーにローマの応援席から悲観の声があがった。

ボールガールからボールを受け取ったイリノア・メッサーラはしっかりとボールをゴールエリアの角において助走、思い切りよく前方に蹴りだした。





「やっぱり、清水さん力が入り過ぎてる……」

「いえ、違います」



メインスタンド観覧中の藤崎詩織が残念そうに呟いた瞬間、隣の佐野倉恵壬が首を振って反論。詩織は驚いて恵壬の顔を見据えた。



「ええ、私もここまでわかりませんでした。セレニーナ・ドミンゲスの狡猾さは恐らく世界トップです」

恵壬は断言するようにそう言った。







イリノアの放ったゴールキックのボールを見上げながら代歩は舌打ちをした。

さっきのもそうだが、後半開始最初のシュート以降、代歩のマンマークについているセレニーナに代歩は苛立ちを感じていた。

さっきのシュートの瞬間、代歩の視界を遮ったあの黒い影はセレニーナの右手だ。

あの一瞬の遮りがシュートミスに繋がったのは間違いない。

これまでもマークについている間審判の見ていない中で代歩は足を削られ続けている。

振り切ろうと動いた瞬間ユニフォームを軽く掴まれたり軸足を蹴りこまれたり、とにかくあらゆる手段を使って代歩のミスを誘っている。

DFがFWを削る。

それはイタリアセリエではもはや常識といっても構わないほど普通の光景ではあるのだが、セレニーナは南米仕込みのダーティーさと狡猾さを兼ね備えている。



動きの速さ、パワー、恐らくそういった部分では代歩はセレニーナに勝っている。

だが、そのほかの部分でセレニーナはひとつ上をいっているのだ。







「清水さんはああ見えて、堅実なプレーが出来る人です。相手がそういうプレーをするなら試合の中でそれを克服していきます。だけど……」

そこで佐野倉恵壬は口ごもる。

後半開始からの投入という、恐らく代歩には慣れていない使われ方。

試合の流れを掴みつつ、そしてセレニーナの攻略を進めるという事は彼女の経験にはあまり無い部分。



「時間が短すぎます。まだ清水さんはセレニーナ・ドミンゲスを攻略できていない」



恵壬は詩織の視線を受け止めながらひとつ頷いてそう言った。











だが、代歩のシュートにはそれなりの効果があったようだ。

フィーナはバイタルエリアから前に出ることを止め、両サイドバックも攻め上がりを自重するようになる。

組織的攻撃を意図していたナスターシャ・シルベストリだったが、攻撃の駒が揃わない段階でその意図は頓挫せざるを得なくなった。

インテルはキャプテンナスターシャの意図とは別により守備的に動き始めていた。





(まだ、守備的になる時間帯じゃないのに……!)



ナスターシャは舌打ちをしながら攻め上がりを見せない両サイドバックを眺めてため息を吐いた。

明らかに選手たちはローマの攻撃力に恐れを抱いている。

確かに攻撃の核となるカミュ・ファルコーニを失いながらも衰えない攻撃力を見せ付けられればそうなるのは避けられない。

だが、それではローマの思う壺ではないか。

攻めないとわかればローマというチームはかさになって攻め立てるのは今までの試合を見ててわかること。

今はまだジーナ・デル・サルトも交代で入ったイルマも守備を念頭に置いているが、いつ攻勢に転じないとも限らない。

森下茜、アギー・バック、オーラ・サネッティ。そして清水代歩の4人だけであれだけのものを演出できるのだから、それに数人加われば連携の熟成はともかく危険になるのは間違いない。



だからこそ攻め気を見せてこれ以上の風を吹かせないことが肝要。

ナスターシャはボールをトラップし、右手を挙げた。





(…く、だめ。読まれるかも……)



ナスターシャは自分を見据えている森下茜に気がついてサインを出すのを中止し、右に張ったフィアッカ・マルグリットにパスを送った。



だが、その軌道に写りこむ影。

サンド・フィオーリが飛び出してパスをカットしたのだ。ナスターシャの顔が驚愕で歪んだ。





(凡ミス……まさか)







サンド・フィオーリから前方走るオーラ・サネッティにパスが伸びてオーラが受けてドリブル開始。ナスターシャが横からチェックに向かうが快足は未だ健在。あっという間に振り切った。



そしてオーラから中央走る森下茜に綺麗にパスが渡り、茜が前を向いた。





「今度こそっ!!」

清水代歩は気合をこめて叫び、力任せにマンマークについているセレニーナ・ドミンゲスの体を押し込んだ。そしてその勢いのまま逆に体を振ってセレニーナを弾き飛ばす格好で距離を取りながらDFラインの裏をとりにかかる。

が、弾かれながらセレニーナが代歩の右足首を左足で蹴りこむ。代歩は痛みに顔をしかめながら体勢を崩すことなく前を向いた。



背中側、視界の端に茜が右足を振りぬいたのが見えた。

そのボールの軌道を確認した代歩は信じられないといった感じでゴールに顔を向けた。





およそ40メートル。

茜はロングシュートを放っていた。

イリノア・メッサーラは驚愕しながら右隅を狙うシュートに飛びついた。

だが、ボールはその手をすり抜け、クロスバーの上を通過していった。

またもローマサイドから落胆の声が響き渡る。





「なんて威力なの……」

イリノア・メッサーラは近くのカレン・アダミッチに体を引き起こされながら背筋が凍る思いを吐露した。

ドライブシュートでもなく、ラツィオ戦で見せたぶれる無回転シュートでもない。

だがその威力、スピードともこれまで見たことの無いシュートだった。

通常ロングシュートならば距離があればあるほどゴールに到達するまでにいくらかスピードや威力が落ちてくるはずだ。

だが今のシュートにはそれが殆ど感じられなかった。

まるでロケット砲のようなシュートであり、もし枠にきっちり飛んでいれば…

そう考えると背中を走る冷たい汗が余計にひやりと感じられる。





「どういうことだよ茜っ!」

だがその思考は大きな日本語の叫び声で寸断された。

みれば肩を怒らせた代歩が憤怒の形相で茜に歩み寄っていくのが見えた。





「いまアタシ、空いてたろ!」

代歩は茜に近づきながら両腕を大きく広げて大声を上げていた。



確かに代歩はほぼ完璧にセレニーナを振り切っていた。

もしそこにパスを通されていればもっと危険な状況になっていたかもしれない。





茜は歩み寄る代歩に笑顔をひとつ見せると同じように両腕を広げ、代歩を抱きとめる。

意外な行動に代歩は面食らったように歩みをやめて腕を下ろす。

茜はそのまま笑顔を崩さずに自分の頬を代歩の頬に合わせる。そして……



















「だって、代歩ちゃんあてにならないんだもん」











茜はイタリア語でそう、言ったのだ。





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【2012/06/03 15:56 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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