忍者ブログ
  • 2017.07
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.09
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2017/08/20 03:38 】 |
第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 39 混沌の芝

「やっと、つながったな……」


森下茜のパスが清水代歩に通った瞬間、橘恵美の肩を借りてテクニカルエリアで試合を注視していたBucchiiが小さな擦れた声でそう呟いた。

これが狙いだったのか

試合前日、スタメン発表のあと言っていた「希望的観測」とはこのふたりのライン。
プライベートでも試合中でも仲がよく、信頼しあっている茜と代歩であったが意外な事にふたりの間のパスの成功率は驚くほど低かった。いやそもそも茜から代歩への決定的なパスというのは今まで見たことが無かった。

茜からカミュというライン、そしてカミュから代歩というラインは既に確立されていたものだったが、茜→代歩のラインは何故か確立されず、それが中間点にいるカミュの負担を倍増させる結果ともなっていた。仮に茜→代歩ホットラインが既に確立されていればラツィオ戦でのカミュの負傷もなかったかもしれない。



「……奇跡、ですね……」


恵美がそう呟いたとき、不意に恵美の肩にかかる重さが抜けた。
自分の力で立ったのか?
そう思って恵美は横を見たがBucchiiの姿は無い。だが、うめき声が聞こえた。
Bucchiiは恵美の隣でうつ伏せの姿で倒れていた。











スタジアムの歓声が爆発している。
ゴールを決めた代歩はその余韻を全身で感じながらゴールマウスに収まり、未だにてんてんと跳ねているボールを見ていた。


「代歩ちゃんっ!!」


声が聞こえて振り返った瞬間、フライングボディプレスのように飛び抱きつきを敢行したアカネの上体を体全体で受ける。が、あまりの勢いに茜を抱えたまま背中から倒れて息が止まるほどの痛みが肺につたう。
そして、


「うおおおおおお!!」
「やったやったやったやったやったっ!!」
「まじかありえねーありえねーありえねー!!」

次々と赤いジャージの選手たちが代歩と茜の上に覆いかぶさっていく。
一番下の代歩は呼吸も出来ないほど苦しい状態だったがそれよりも歓喜のほうが上回る。

エースの重圧?
なんだそれ?
この喜びを感じられるなら、あれ以上の重圧だって耐えて見せるよ。
















ローマ選手たちの歓喜の山の傍ら、ナスターシャ・シルベストリは唖然とし、滑り込んだ体勢のまま芝の上に座り込んでいる。


(どうして、ボールが足をすり抜けたんだ……?)


ありえない現象。だが茜が最後に放ったパスの軌道上の芝を見て納得したように頷いた。
そこにはスパイクで捲れあがった芝、ギャップで地面が盛り上がっていた。

恐らく、ナスターシャの足がボールに触れる直前、そのギャップでパスの軌道が変わり、僅かに浮いたボールはナスターシャの右足をギリギリでかわしたのだろう。そしてその後ろにも僅かなギャップの盛り上がりがあり、次にそこに当たってもとの軌道に戻った―
そう考えるしか説明の仕様が無い。

まさに、偶然の産物…… いや、奇跡の産物なのか。


その奇跡を味方にできたのがローマだった、森下茜であったということか。
ナスターシャが鼻に抜けるように小さく笑い、顔を上げると健康的な肌色の右手が差し出されていた。
その手をとり、ナスターシャは引き起こされる。正面に対峙するのは柔らかく優しげな微笑みの森下茜だった。




「……完敗、ね」
ナスターシャも微笑みながら自嘲的にそう言うと、茜は笑顔のまま首を振った。
「ううん、やっぱりナーシャは、インテルは強かったよ。私は本当に全部出し切ってやっとだもん」
「そうね、その全部出し切れるのがあなたの強さよ、でもね」

ナスターシャはそこまで言うと不意にジャージを脱いでインナー姿になり、ユニフォームを茜に差し出した。

「次は負けないわよ。覚悟してなさい」
茜はそれを見て楽しそうに笑ってから同じようにジャージを脱いで差し出し、交換した。
それからお互いが右手を差し出し、がっちりと握り合った。
まだきっとこれからも戦い続けるのだろう。お互いが、お互いを認め合い、尊敬しあう関係で戦い続けるのだろう。
尊いふたりの友情は、もうひとつ次のステップに進んだのだろう。



と、そこで歓声にまぎれてカミュ・ファルコーニの悲鳴のような声が聞こえた。
振り返るとカミュが泣き出しそうな表情で足を引きずりながらこちらに向かっていた。カミュが指差す先を見た茜とナスターシャは同時に顔を蒼白にさせた。

「ミステルが、ミステルが……」


テクニカルエリアで倒れたBucchiiを涙を流しながら介抱する恵美の姿がそこにあった。

















つづくっ!

PR
【2012/06/17 17:31 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0)
<<彼の誇り | ホーム | 第33節 Internazionale Milano vs Associazione Sportiva Roma 38 ふたり>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














<<前ページ | ホーム | 次ページ>>