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【2017/08/20 03:38 】 |
旅立ちはいつも突然に


「さて」
ローマ郊外の病室。
今日まで入院していた元ASローマ監督であるBucchiiは着替えを済ませて立ち上がるとボストンバックを肩に抱えた。





イタリアは第2の故郷だ。
彼はいつもそう考えていた。
ジュニアの頃から才能に恵まれ、「ファンタジスタ」と呼ばれた彼は高校卒業後当然のように海外挑戦を志した。
その先がこのイタリアだった。
イタリアで挫折や敗北、勝利など色々なことを学んだ。
オリンピックでは金メダルをかけてイタリアと戦い、敗北した。ワールドカップでは挑戦権を獲得できなかった。
それでも、彼は思う。


イタリアは第2の故郷だと




少し皺のよったジャケットを右手で引っ張ると途端に綺麗になる。
流石はアルマーニのスーツ。職人が端正こめた一流品は値段も張るが手抜きの見られない一品。
会計を済ませてホールから外に出ると見知った顔が大きなスーツケースを持って待っていた。

「橘か」
「ミステル、お疲れ様です」
橘恵美は彼の顔を見て柔らかい微笑みを見せた。















「そうか、日本か」
「はい。SCMがコーチとして雇ってくれることになりました」

彼と恵美は街への道を並んで歩いている。バスや自動車という選択もあったのだが、ふたりは示し合わせたかのように徒歩を選択していた。
結局Bucchiiは最終節前に監督を解任され、いわゆる「Bucchii体制」が崩壊した。
彼の庇護を受けていた橘恵美も時を同じくしてコーチの職を辞する。
旧体制の残党が残るのは新しく生まれ変わるであろうチームに悪影響を及ぼしかねないという懸念がチームにあったのかどうかはわからないが、この選択は彼女の希望によってなされたものである。

「カミュは泣いただろう」
「ええ、説得に一晩かかりましたよ」

恵美の辞任に一番衝撃を受け、そして残るように激しく言い寄ったのはやはりカミュ・ファルコーニだった。
泣きながら責めたてる彼女を恵美は冷静に優しく説得。夕方から次の日の朝までかかって別れることを納得させた。


「カミュは、あの子はもう私がいなくてもひとりでちゃんと立てます。これからも私たちを驚かし、楽しませる素晴らしいプレイヤーでいてくれると思います」
「ああ、そうだな」
笑顔の中にじわりと浮かぶ涙。彼はそれに気づかない振りをしながら頷いた。


「ミステルはどうされるんですか?」
「おいおい、俺はもう監督じゃないぜ」

はっと気がついたような表情、そしてそのあとくすくすと笑った。

「そうでした。でも3年間そう呼び続けるとすぐには治らないものですね」




「俺は一旦日本に帰るよ。嫁にも会ってないし、それに下の娘が最近サッカーに興味を持ち始めたらしくてな」
「へえ」
「ちょっと教えてやろうかなと思ってな」

彼の表情は意外なほど晴れやかだった。
直前で日本人初のスクデット監督の座を追われたローマのことを恨んだり悪く言うかと思ったがそんなことは一言もない。
そのことを聞くと彼は豪快に笑った。


「ばーか、記録なんてどうでもいいんだよ。俺が満足したんだ、それ以上なにがあるんだ?」


そうだった。
こんな人だからこそ自分は付いていったのだ。
指導者として優れているかとか、そういうことじゃなかった。


私はこの偉大なる人間の指導メソッドを吸収し、それを日本に持ち帰る。
そして日本を制し、世界に挑戦する。
それこそが私橘恵美の目標。
SCMコーチはセカンドステージからの契約なので、まずは日本に帰ってTMFA、それに2部のチームを見て回って見ることにしている。LCCのつてを使ってそのスケジュールは既に決まっている。


まだまだ学ぶべきことは多い。もしかしたら一生かかっても到達できないかもしれない。
私はBucchiiの伝道師として、そして橘恵美個人としてこれからもサッカーの世界で挑戦し続けたい。
恵美は柔らかい微笑みで彼の横顔を見た。その視線に気がついた彼は不思議そうな顔をする。


「なんだ?なにかついてるか?」
「いえ、なんでもありません」



私は、これからもずっと、挑戦者だ―



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【2012/07/01 20:37 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0)
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