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【2017/05/24 22:26 】 |
【鋼鉄の巨人】不穏な島



「で、水着買ったのキルシェ?」
「ああ、ゆたかとみなみに選んでもらった」

キルシェは赤いワンピースタイプの水着を両手で広げて菜由に見せた。

「いいわねえ、可愛いわね」
「そうか」

キルシェはさして喜ぶわけでもなく表情を変えないまま今さっき広げた水着をカバンに仕舞いこんだ。
だが表情は変わらずとも、旅行を楽しみにしているのはすぐにわかる。


まだ3日前だというのに既に2回目の荷物準備だからだ(笑)





衛星からの写真―
 
「ミスリル」西太平洋戦隊がその不穏な画像を入手したのはつい3時間程前の事だった。
 
 
「軍隊?」
東京にある「ミスリル」本部ビル。その最上階の作戦室
で西太平洋戦隊戦隊長のテレサ・テスタロッサは独特の声を張り上げ、緑色の野戦服に身を包んだアンドレイ・カリーニンが神妙な顔で頷いた。
 
「はい、これを見ていただければわかると思いますが、」
カリーニンは小脇に抱えた書類の束から更に数枚の写真をテッサの目の前に置いた。そこには衛星からではあるがかなりの倍率でズームアップした写真。そこに映る兵士たちの装備や装甲車の姿も確認できた。
 
「なるほど、でもこんなへんぴな島に… あ、」
テッサは写真と航空地図を見比べて声を出した。カリーニンがもう一度頷く。
 
「そうです。ここは廃棄前の核を一時保管する施設の島、通称『サルベージ』です」
 
 
 
 
1987年にアメリカとロシアの間で交わされたINF条約(中距離核弾頭削減条約)により、両大国が核兵器の削減に努めた。ただ核というのは完全廃棄が難しいものであり、最終処理の順番待ちとして一時的に保管する施設が必要となった。
その内のひとつがこの島、サルベージ島だった。この島はその戦略的見地や危険性などから当時存在を抹消されていた。
 
今現在もこの島の存在は極秘扱いになっており、巷で売られる世界地図などには当然載っておらず、日本などの軍備的に小国な国はその存在を知らされてもいない。
 
「でもカリーニンさん、今この島は保管施設としての役割を終えた完全な無人島ですよね」
「はい、その通りです」
 
カリーニンは頷いてそう答える。
このサルベージ島は確かに核廃棄の一時保管施設ではあったが、数年前にすべての核弾頭を排出、その役割を全て終えた。そして施設もその機密性からそのまま廃棄され、現在に至っているはずだ。
 
「現在この島はアメリカ、ロシアの相互監視を受けています。その島で軍隊を展開させられるのは普通では考えられない」
「トライデント、ですか?」
「はい、そう考えて間違いないでしょう」
 
アメリカ、ロシアの監視下にある島で軍を組織させるという事は、当然両国との密接な繋がりを持っている組織という事になる。出来うる組織はおのずと絞られてくる。
まずは「評議会」だが、彼らは組織としての体を持ってはいるが実質的な力、人員を動員して何かを成すという組織ではない。先日の廃都市でも実働部隊は「トライデント」の兵士であり、彼らは装備や費用的な援助を行っただけだ。だから彼らが独自に部隊を編成するとは考えにくい。
ではその他に両国と密接な繋がりがあり、秘密裏に軍を編成できる組織としたら・・・
 
兵器産業である「トライデント」しか考えられない。
 
 
カリーニンは数枚の書類をテッサに手渡しながら話を続けた。
 
「ミスリルが独自に調査をしたところ、この施設で軍が配備されたのは5日前、そして島では何かの演習が行われているようです」
「演習、ですか?」
「はい。ただ内容までは掴めませんでした」
 
テッサは後ろにまとめた髪を右手でいじくりながら思案する。
トライデント、
軍事演習、
核保管施設、
 
「…まさか…」
「ええ、私もそう考えたからこそ緊急で大佐殿を呼び出したのです」
 
 
トライデントがもくろむのは、新型兵器の実地演習。
そして、その兵器は…
 
「何らかの、新型核兵器…」
 
テッサは蒼白な顔で呟いた。
























「ではサルベージ島での作戦です。現段階でのSRTは?」
「はっ! 現在我が戦隊が保有しているSRT隊員10名の内、6名がイスラエルでの作戦行動中、ウルズ2とウルズ6、ウルズ7はアメリカの兵器廠にて「プロジェクトA-S」の開発訓練中であります」
テッサの傍ら、リチャード・マデューカスが会議室全体に響く声で質問に答える。
 
まずい時期にあたったものだ。テッサは内心で舌打ちをした。
特殊任務に優れたSRT兵士のほとんどが身動きできない状況、PRTと呼ばれる一般兵士にはテッサがたてたこの作戦には不向きであった。
 
 
「カリーニンさん、ウルズ13はどうですか?」
「はい、既に訓練過程を全て修得、精神的にも問題ないレベルです。ただSRTとしては初任務となりますが」
「背に腹は替えられません。ウルズ13を任務に起用します。ただ彼女ひとりではまだ難しいですから…」
 
テッサは少し思案し、やがて諦めたように首を振った。
 
「仕方がありません、今回も『ヴァルキリー』の力を借りましょう」
「しかし大佐殿、あなたの作戦ではあとひとり必要になります」
マデューカスが渋い表情で呟く。だがテッサは軽く頷き、傍らの受話器を取った。
 
 
「ちょうど良い機会です。彼女にも協力してもらいましょう」
 
 
 
 
 
 
 





3回目の荷物準備を終えた瞬間、キルシェの折りたたみ式携帯が音を鳴らして振動する。
キルシェは携帯電話を手に取り、着信画面を覗いてから盛大にため息を吐いた。


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【2012/07/17 20:12 】 | Killshe's story | 有り難いご意見(0)
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