忍者ブログ
  • 2017.04
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.06
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2017/05/24 22:29 】 |
【鋼鉄の巨人】意外な援者


折りたたみ式の携帯電話を閉じた小早川ゆたかは下を向く。

「どうしたの、ゆーちゃん?」
「あ、おねーちゃん……」

同居する従兄弟である大学生のこなたの声に慌てて明るい顔を作って顔を上げる。

「うん、キーちゃん仕事入っちゃったみたいで……一緒に行けないけど必ず合流するって……」

最後の声は消え入りそうになりながらだった。こなたは歩み寄り、ゆたかの頭を優しく撫でた。








横浜本牧埠頭、D突堤と呼ばれるところにキルシェ・アーカイラムはいた。
深夜を過ぎて遠くの灯台や橋げたの灯りがキルシェの体を時折照らす。
キルシェが「ミスリル」の任務を引き受けると大抵この場所が合流ポイントになる。キルシェは肩掛けのバックに収められた愛用の大型ナイフを確かめ、周囲を見渡した。
 
すると、遠くから車のヘッドライトが見える。
それはぐんぐんとキルシェのところに近づき、目の前で停車した。キルシェはバックからいつでもナイフを取り出せるように準備し、身構えた。
そして後部座席のドアが開く。そこから出てきた姿を見たキルシェは驚きの表情を浮かべた。
 
「カオリ…」
「キルシェ、こんばんは。何年ぶりかしら…」
 
目の前にはHANの選手である八重花桜梨。
 
「何故、お前がここにいるんだ…」
「それは私が説明しましょうか?」
 
不意に横からの声。キルシェがそちらに顔を向けると、花桜梨に続いて車から降りた伊集院レイの姿が。
レイはキルシェに向かって微笑みながら口を開いた。
 
「TMFA代表、いえここでは傭兵部隊『ミスリル』の戦隊長と言った方がいいわね。そのテレサ・テスタロッサさんが花桜梨さんを指名したのよ」
「カオリを…」
「でも、花桜梨さんはウチの大事な選手だからね。一応私も同行をお願いしたのよ」
 
なるほど。
キルシェは理解した。
つまりレイはテッサの事を信用していない。というより、信用してもよいか計りかねている。
そこで、この機会を利用して彼女の真意を探り、またその器量も見定めようという腹か。流石巨大な企業グループを統括する人間だ。抜け目がない。
 
だが、それは杞憂だ。
キルシェは既に何度もミスリルの作戦に参加し、テッサの指揮官としての能力に触れてきた。
 
一言で言えばテレサ・テスタロッサの指揮官としての能力は想像以上に高い。
 
アイデアに溢れた作戦の立案力
人員の掌握力
そして不測の事態においても失われない冷静さと臨機応変にこなせる適応力
 
全てが超一流であり、その指揮官ぶりにはキルシェも舌を巻くほどだ。
そして、これが一番重要になるのだが、彼女には独善的な野心というものが無い。
今でこそ大佐という士官職についてはいるが、その権力を振りかざすこともなく、いわゆる支配欲も希薄。
彼女がその力を振るうのは自分のためではなく、誰かの為。そして彼女が信じるであろう「正義」の為だけだ。
 
 
 
レイが目くばせをし、黒塗りの車が離れていく。それを待っていたかのように上空から風が巻きおこり、ローターの回転音が響く。上空に目を移すと漆黒の闇にまぎれながらも僅かに黒光りするヘリの胴体が見えた。
 
「時間ピッタリ…」
 
花桜梨がそう呟いた。
 
 
 
 
 
 
「皆様、お待たせしましたか?」
ヘリはキルシェたちから20メートルほど離れた場所に着陸し、プロペラは激しい風をまき散らせながら回転を続けている。胴体の横のハッチが開き、出迎えたテッサがキルシェたちに微笑みかけた。
 
キルシェはむっすりとした無表情のままテッサの脇を通ってヘリに乗り込む。続いて花桜梨、レイが続けて乗り込んだ。
全員がヘリに乗り込むとプロペラの回転が速度をあげ、地面から浮き上がる。上空にあがったヘリは漆黒の闇にまぎれながら不意にその姿を消した。
 
 
 
 
 
 
 
「まずは八重花桜梨さん、ミスリルへようこそ」
ヘリの中、3人掛けのベンチシートが向かい合う。コクピット側のシートにはテッサとキルシェが座り、反対側には花桜梨、レイが並んで座った。そしてテッサは睨みつけるような視線を送る花桜梨に向かって微笑んだ。
 
「…別に私はあなたの兵隊になった覚えはない…」
「それでも、今回の任務ではあなたは私の指揮下にあります。それは覚えていてくださいね」
 
花桜梨のそんな言葉にもテッサは眉ひとつ動かさずに微笑みを向ける。テッサは次にレイに顔を向けた。
 
「伊集院さんも、今回は同行ありがとうございました。大したおもてなしも出来ませんが、ご勘弁ください」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。何か協力出来ることがあれば言ってくださいね」
 
レイが礼儀正しくそう返す。しかしテッサは微笑みながらもゆっくり首を振った。
 
「いえ、協力は結構です。と、言うよりも余計な事はしないでください」
 
その言葉にレイの眉間に僅かに皺が寄る。だがテッサの微笑みは変わらず。
 
「今回の任務は政治的にも非常にデリケートなんです。勿論派遣するキルシェさんや八重さんにもそれは言えます。だからこそ、専門職である我々の邪魔だけはしないでいただきます。勝手な真似をされると、最悪の結果を招く恐れも有りますので」
「勝手な真似って、そんな言い方…」
 
レイが言い返そうとしたが、テッサが掌をレイに向けてそれを制した。
 
「伊集院さん、これはお願いではなく命令です」
「命令?」
「ええ、私たちと同行する以上、あなた方も八重さんやキルシェさんと同じく私の指揮下です。作戦中は私の命令に従ってください。お嫌でしたら今すぐ降りてください」
 
そう言ったテッサの顔はもう笑ってはいなかった。レイはその威厳に満ちた表情に気圧される様に頷いた。
 
 
「ところで…」
それまで無表情で彼女らの話を聞いていたキルシェが声を出し、全員が注目する。キルシェは集まる視線に身じろぎしながらもテッサに顔を向ける。
 
「…今回の作戦は潜入任務と聞いたが、このままこのヘリで行くのか?」
「いえ、それはしません。一応このヘリはECSで姿を消していますが敵がECS対応のレーダーを使っていれば簡単に見つけられてしまうでしょう」
 
テッサは軽く息をつき、笑った。
 
「ですので洋上に待機している艦でポイントまで向かいます」
「艦?」
「ええ、ミスリルが誇る最新鋭の潜水艦です。あ、見えてきましたよ」
 
テッサが窓の外を指し示す。その先には海に浮かぶ黒く、大きな物体が見えた。
 
 
 
 
PR
【2012/07/18 05:48 】 | Killshe's story | 有り難いご意見(0)
<<【鋼鉄の巨人】トゥアハー・デ・ダナン | ホーム | 【鋼鉄の巨人】不穏な島>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














<<前ページ | ホーム | 次ページ>>