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【2017/06/26 02:22 】 |
【鋼鉄の巨人】 最新鋭装備を連れて




「第3魚雷管、開門!続いて第4、第5魚雷管も開門しますっ!」
発令所クルーが大きな声で号令。そしてダナンの前部にある魚雷管のハッチが次々と開け放たれる。
ガコン、ガコンと大きな音が発令所全体に響き渡る。



「かなり響くのね、理屈ではわかってたつもりだったけど実際聞くとすごい音ね」
菜由とレイは発令所の後方、ちょうどテッサの座る艦長席の真後ろあたりに据え付けられた長椅子に座っている。菜由がそう呟くと座りの悪さをしきりに気にしているレイは軽く頷いた。
 
 
魚雷管の中に装填されているのは魚雷ではなく特殊潜水艇と呼ばれるものだ。
形状は中型の魚雷そのものであり黒く塗りつぶされた機体の中には操縦席と呼ばれるコックピットがあり、その中に操縦士が入れるようになっている。
日本の回天やイタリアの潜水艇など、特殊潜水艇の歴史は割に古いものだが海上戦においてその戦果というのは目覚しい、とはあまり言えず今でもドイツやイギリスなどで製造され作戦に使用されてはいるものの、その存在自体あまりメジャーとはいえない。
 
そして、今回その3機の潜水艇の中にはキルシェ、花桜梨、サーティの3人がそれぞれ乗り込んでいる。
3人は一様に操縦桿を握りながら発射の時間を待っている。
 
 
 
 
 
 
「今回の潜入任務ですが、衛星通信ですら傍受されてしまうほどその周囲の警戒は厳重です。この子もECSなど一通りのカモフラージュ装備は施してありますが、あと20マイルも進めば発見されてしまうでしょう」
 
テッサが言う、「この子」とは言うまでもなくトゥアハー・デ・ダナンのことであり、いかに最新鋭の電子装備を施したところでそれを傍受する装備を相手が持っているという仮定に立てばその兵装は無力といっても差し支えない。
そして、相手は世界最大の兵器産業である「トライデント」であり、その可能性は極めて高い。
 
「ということで今回は申し訳ないですが泳いで島に上陸してもらいます」
テッサは事も無げにそう宣言し、キルシェ、花桜梨、サーティは同時に顔をしかめた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「第3魚雷管から5分刻みで発射します。発射準備!」
「発射準備!」
テッサの号令に魚雷担当クルーが言葉を復唱する。
第3魚雷管に装填されている特殊潜水艇に乗り込んでいるキルシェはスピーカーから聞こえる号令の声を聞いて操縦桿を持つ手の力を強くした。
 
 
今回の作戦の潜入方法は次のとおり。
母艦であるダナンはサルベージ島から発見されないぎりぎりの場所で深度深く停止。そこからレーダー対策を施した特殊潜水艇を打ち出す。
海底面すれすれを潜水艇は走り、島から約2キロの地点で浮上、海面に上がる前に操縦士は脱出。そこで潜水艇は破棄。そこからは自力で泳いで島を目指すというもの。
島の南部にキルシェ。西部に花桜梨、東部にサーティがそれぞれ上陸する手筈になっている。
 
 
「第3魚雷管より潜水艇、発射!」
「発射!」
 
号令とともにキルシェの乗る潜水艇が撃ちだされる。操縦席のキルシェの体に物凄いGがかかる。
キルシェは体を支えている操縦桿から手を離さないように必死で掴む。ちなみにこの操縦桿では潜水艇を操作することはできない。
コンピュータ制御によるプログラムで自動運転を行い、目的地まで到達する。
 
Gが多少緩み、潜水艇が巡航運転に入ったことをキルシェは確認。上部に貼り付けてあるデジタル式の計器パネルを見て、異常がないことを確認した。
そして左目に装着したソリトンレーダーのチェック、更に体を覆う黒いスーツの具合も確かめた。
 
 
 
 




 
「これがソリトンレーダーです。ヴァルキリーは知っているわよね」
左目を覆う形の小さな機器。これがソリトンレーダー
ボタン操作で赤外線カメラ、暗視カメラ、望遠鏡にも切り替わり、生体レーダーも備わっている。
更に最新暗号式のデータリンク機能によりそこからの映像情報などがダイレクトで発令所の指令本部に流され、そして指令本部からのデータも即座に受け取ることができる。
 
そして骨伝導にて通信を行う最新の通信マイク。耳の奥に装着し、周りに音が漏れない工夫がされている。
 
ここまではキルシェも以前の作戦で使用したこともあるものだった。
以前の作戦で機器のデータ収集も終わり、実戦配備間近なのだろう。
 
だが、もうひとつのものはキルシェも始めて目にかかるものだった。
黒色のスーツ上下。見た目は本皮のライダーススーツに見えなくもない。が、手に取るとそれは見た目より遥かに軽い。そして柔らかい。
触った感じは牛革でも合皮でもなく、どちらかといえばシルク素材を連想させるものだった。
 
 
「これはミスリルが開発したアーマード・マッスルスーツ。通称AMスーツです」
テッサが胸を張ってそう言った。
 
「3人のサイズにカスタマイズしてありますので、とりあえず着てみてください」
テッサに言われるままに3人はそのスーツを着用する。カスタマイズしたということもあり、体にしっかりフィットする。
 
 
「ほんの少し動きづらいかな?」
キルシェは肘や膝の関節を少し動かしながらそう感想を述べる。
「最初はまだスーツの伸縮があるので動きづらいかもですが、すぐにフィットすると思いますよ。それよりも左手首の裏側の小さなボタンを押してみてください」
キルシェは花桜梨とサーティに先立ってそのボタンを押す。するとスーツから空気の抜けるような音がしてスーツが体に張り付いた。
最近胸の成長を気に病んでいるキルシェだったが、その意外に整ったボディが張り付いたおかげで露わになる。
 
「カリーニンさん」
「はっ」
テッサの目配せでカリーニンが不意に腰の銃を抜いてキルシェに向ける。躊躇するまもなく発砲した。完全に不意を突かれたキルシェの左胸に銃弾がめり込んだ。
 
 
「き、キルシェっ!!」
前に出ようとする菜由をテッサの左腕が押し留める。
キルシェは痛みに顔をしかめた後、不思議そうな顔をして銃弾がめり込んだ部分を左手で触る。からりと音がして胸に埋め込まれた銃弾が床に落ちた。
 
「オリハルコン(精神感応金属)を繊維状にして合金製を高めたんです。更に肉体の動きに合わせて感応繊維の収縮力を極限にまで高めることによって、通常の10倍以上の力を開放させることができます」
 
キルシェは落ちていた銃弾を拾い、右手の親指と人差し指で挟むようにつまむ。そして少し力をこめると銃弾はまるで飴のようにぐにゃりと曲がった。
キルシェは無表情のままテッサに振り返る。
 
「防弾性能はよくわかった。だが痛かったぞ」
「強化したのは合金による非貫通能力向上が主でしたので、命中すればそれなりに痛みは伴うと思います。そこはご勘弁ください」
 
 
キルシェが頷きながら袖口のつまみなどをいじくっている。その傍ら、用意されたAMスーツをテーブルの上に投げ捨てる音。
投げたのは花桜梨だった。
 
 
「こんなもの、必要ない…私は自分の実力でやらせてもらう」
「あら、それは困りますよ花桜梨さん」
花桜梨の言葉に真っ向からテッサが言い返した。
 
「今回のミッションはこのテスト段階のAMスーツの実戦データ収集も兼ねているんです。あなたの実力やプライドは関係ありません。これを着用して出撃するのは命令です」
 
 
テッサと花桜梨が睨み合う。
だが、それも数秒のこと。花桜梨の右の眉が一瞬吊り上がると右手で先ほど投げたAMスーツを手に取った。
 
 
「……わかった」
「わかっていただけて何よりです」
テッサは恭しく頭を下げた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
潜水艇の中でAMスーツのつまみを操作するキルシェ。左手首部分の袖口にあるつまみによって人口筋肉繊維の収縮力を調整できる。最初は等倍モードにした。
そこで通信マイクからテッサの声。
 
『まもなく浮上します。ヴァルキリー、準備を』
「了解」
キルシェは短く答えると傍らに置いてあるバックパックを背中に背負い、足ひれを両足に装着する。
それが完了したころ、モニター脇のスピーカーから短いビープ音が数回鳴り、そしてハッチがガコリという重い音と共に開いた。あっという間にコックピットが海水で満たされる。
キルシェは体を戒めていたベルトを外して海中に躍り出る。潜水艇はその役目を終えて海底へと沈んでいった。
足ひれを器用に動かして海面に出る。暗い夜空と暗い海面。キルシェは夜空を睨んで北極星を見つけると、その方向に顔を向けて左目のソリトンレーダーを起動させ、暗視モードに切り替えた。
水平線に沿うように黒い塊、島が見えた。
 
 
「あれが、サルベージ島……」
キルシェは呻くようにそう呟いてから島に向かって泳ぎだす。
作戦開始だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
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【2012/07/24 11:06 】 | Killshe's story | 有り難いご意見(0)
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