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【2017/12/18 19:39 】 |
【鋼鉄の巨人】レディ・ウルフ


ほぼ同時刻‐
キルシェ、花桜梨、サーティの3人がそれぞれの場所で別々の敵と遭遇、交戦状態に入った。
トゥアハー・デ・ダナン司令室内はとたんに慌ただしくなり、それぞれのレーダーから送られてくる画像データなどの解析に追われ始める。
その中で艦長であり、最高司令官であるテレサ・テスタロッサもまた椅子から立ち上がって隊員たちに指示を飛ばしていた。





植え込みの影からサーティが通信棟に視線を向ける。
先ほどの銃撃の軌道から推測するに、通信棟15mか20m付近からの狙撃。絶好の撃ち下ろしのポジションだ。
しかも銃弾は7ミリ弾。ドラグノフなどに代表される狙撃に適したライフル。
それに引き換えこちらはM-16。5,56ミリ弾は軽く、実は狙撃には適しているとは言えないのだ。
だがそんなことを言っても仕方がない。
サーティは腰のホルダー脇に指していた狙撃用の望遠スコープを手早くM-16に取り付けると照準の確認をする。


(これで勝てるのか……)


地形の不利、武器の不利、更に相手の技量の高さも推測すれば絶望的とも言える状況だった。



『ウルズ13、聞こえますか?』
サーティの小尾骨から振動。ダナンからの通信だ。
サーティはライフルの装填をしながらそれに答える。

「聞こえている」
『まずい状況です』

当たり前だ。
そう吐き捨てそうになるがぐっとこらえてテッサの声に耳を傾ける。

『狙撃戦という状況自体も厄介ですが、その狙撃手が通報を行っているのなら、5分も経たずにそこに兵士たちが殺到するでしょう。その前にこの状況を打破しなければなりません』


その通りだ。
身を固められている状況で敵兵が殺到すれば確実に捕らえられるか、殺される。
ならば逃げるか?
いや、動いた瞬間狙撃される可能性の方が大きい。
さっきの初撃でわかった。相手はプロ中のプロだ。

「じゃあどうすればいい?」
苛立つ気持ちを隠そうともしないでサーティは吐き捨てる。
『落ち着いてください。こういう時こそ冷静に。わかりますねウルズ13』

諭すような口調のテッサ。
そこでサーティは思い出す。「ミスリル」での人格再生プログラム、そして特殊工作員としての訓練プログラムの中で、常に言われ続けていた言葉を。


どんな時でも常に冷静になれ


サーティはゆっくりと深呼吸をする。そしてソリトン・レーダーを最大望遠モードにし、狙撃手が隠れているであろう付近に視線を向ける。

「大佐殿、いま敵のデータを送る。特定をしてくれ」
『了解』
小尾骨から聞こえるテッサの声は心なしか嬉しそうにも聞こえた。







だが敵もさるもの、サーティが必死に探すがその影すら見つからない。
時間がない。
サーティは決断。通信棟に向けてM-16の銃口を向けて発砲した。
そしてその瞬間その場から飛び跳ねながら逆の木陰に向けて拾った木の枝を投げる。通信棟から銃弾が今さっきいたところに寸分違わず打ち込まれ、そして次の瞬間、投げ込んだ枝の落下付近にも打ち込まれる。
サーティは身を潜めながらレーダーを向けた。


銀色の長い髪、灰色の野戦服。つり目だが端正な顔立ち


(女、だと……)



望遠モードで捉えたその姿は、紛れもなく女性のものだった。



「ウルズ13から画像データ、送られました!」
「解析、急いで!」
テッサが通信手に怒鳴るように指示を出す。ほどなく手元の届いたデータを見てテッサは軽くため息を履いてから無線マイクを握った。





初撃から4分経った。
もうすぐここに兵士たちが来る頃だ。
一瞬捉えた相手の狙撃手だったが既にその姿はない。


『ウルズ13、敵の特定完了しました』
「頼む」
データを送ってから1分も経っていない。大した速さだ。
サーティは改めて「ミスリル」いや、いつもは可愛らしいばかりの上官の手際の良さに感心していた。

『相手はトライデント直属の狙撃手であり、元オリンピック金メダリストの「レディ・ウルフ」です』



サーティは大きなため息を吐いた。
よりにもよって金メダリスト……
それよりも、レディ・ウルフの経歴の方が怖い。
元ロシア軍特殊部隊で狙撃手を担当、その実力は目覚しく、数年前のオリンピックのライフル射撃部門で圧倒的な強さで金メダル。
それはいい。問題はそのあとだ。
金メダルを取ったあと、軍に復帰するがその当時所属していた部隊の部隊長と衝突。遠征先で3日間かけて部隊長を含む13人を殺したのだ。全て狙撃で。
性格は粗暴で残虐。遠くから人を撃ち抜いて、死んでいく様を眺めるのが好きなイカれた頭の持ち主だ。


『いいですかウルズ13。相手は人格破綻者ですが腕は本物。恐らく世界でも5本の指に入るくらいでしょう』

そんな奴がなぜトライデントに?
いや、だからこそトライデントなのか。
ここならば自分の大好きな人殺しを思う存分させて貰える。

『あなたの射撃の腕は知っていますが、それでもレディ・ウルフには遠く及ばない』


はっきり言ってくれるねこの上官殿は。サーティは薄く笑った。


『と、いうことでこちらは少し卑怯な技を使いましょう』

テッサが作戦をサーティに伝える。サーティはそれを聞いてもう一度大きなため息を吐いた。


「大佐殿、随分無茶な作戦ですよ。失敗する確率の方が大きそうだ」
『無理は承知です。でもあなたには時間がない』

確かに時間はない。既に5分は経過しているが敵兵が来る気配はない。
サーティは初めてその事に気がついた。

『もしかしたら相手の人格破綻者はあなたのことをなぶり殺しにしたくて通報をしていない可能性もありますね』
「ああ、そうかもしれない」

性格は歪んでいるが、戦術は極めてオーソドックス。狙撃のセオリーをきちんと守り抜いている。
そこは元金メダリストであり、軍人であるが故か―
なるほど、きちんと相手を知れば対策できるということか。


どんな時でも冷静になれ


サーティは自嘲気味に笑う。
「了解、大佐殿の作戦で行く」
『ご武運を』
小尾骨からの声を確認するとサーティは腰のベルトに下げた手榴弾を確認した。



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【2012/11/03 06:30 】 | Killshe's story | 有り難いご意見(0)
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