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【2017/09/24 08:34 】 |
新しい選手の力

晴天の国立競技場。
ここで「あけぼのブレンドリーマッチ」第1戦、対カナダ戦が行われる。
国内組だけで臨む女子代表は格下であるが、アメリカやメキシコなど強豪国との大戦も多いカナダ戦で戦力の見極めと勝利を目指す。

スターティングメンバーは以下の11人

GK 八重 花桜梨
CB 藤堂 竜子
CB 二見 瑛理子
CB 桜町 由子
DMF 里仲 なるみ
DMF 本田 飛鳥
LWB 豊田 可莉奈
RWB 川添 珠姫
OMF 高見 詩織
FW 天羽 空
FW 後藤 育美

システムは3-5-2。3バックの中央には頭脳派DFの二見を置いてベテランの藤堂、そして初選出された桜町を両側に置いた。
守備的な中盤には里仲、本田のSCMコンビの代表常連選手。両サイドも豊田、川添とこちらもハーレンジャパンではお馴染みとなった選手。
トップ下には高見、ツートップは速さの天羽と決定力の後藤を置いた。




試合開始後、数分で日本女子代表がボールを支配する展開となった。
確かにカナダ代表は北米でアメリカなどの強豪を相手にする機会も多い国だが、全体的にプレーに雑さが目立つ。
フィジカル王国であるアメリカに近いプレースタイルであるのだが、技術面が及ばなすぎるという感じだ。


中盤センターサークル付近でボールを受けた本田飛鳥がルックアップ。前方のトップ下高見詩織が大げさにボールを要求しているのをちらりと横目で確認しながら左サイドに大きくボールを蹴り出した。

(そのスペースなら、可莉奈が狙っていないはずがないっ!)

逆の珠姫が後ろ目にいるということも飛鳥の選択には大きな助けになっている。そして案の定、そのスペースに豊田可莉奈は走り込んでいて、カナダの選手を振り切りながらボールを受けてゴール前に放り込む。速いボールはニアサイドに飛び込んだ後藤育美の頭にピタリと合って先制、国立競技場が歓喜に包まれた。

少し憮然とした表情の高見詩織の視線を受けて飛鳥は肩をすくめる。そして育美を中心とした歓喜の輪に飛鳥も加わっていった。







「君は、やはり森下茜が目標なのか?」

代表合宿最終日。すべての練習を終えた選手たちが宿舎に帰る中、飛鳥はヨハン・ファン・ハーレン監督に呼び止められた。
いや、正確には彼の通訳であるフランク・リーフデに呼び止められたのだが、どちらにしても同じことだ。


「はい、森下さんは選手としても、人間としても尊敬できる人だと思っています」

飛鳥は嘘偽りのない言葉をハーレンに向けた。それを通訳したフランクの声にハーレンは2度3度頷く。そして飛鳥に無表情な瞳を向けながらオランダ語で話しを始めた。


「君のプレーを見ていれば、森下茜を手本としていることはすぐにわかる。そして、見るたびに君のプレーは彼女に近づいている」

それを聞いた飛鳥は素直に笑顔を見せる。
この監督はちゃんと自分のことを見ていてくれている。自分の目指す地点をプレーだけ見てわかってくれている。
そう感じていた。
だからこそ、次の言葉が彼の口から発せられた時、目を見開いてしまった。


「だが、そのままでは君は森下茜には永遠になれない。いや、そのままでなくても、君は彼女にはなれない」
















カナダが中盤でボールを奪ってカウンターを仕掛ける。
だがドリブルを基本とした単調な攻撃にDFリーダーの二見は的確な指示を選手に出してなるみと藤堂竜子で選手を囲い込んでディレイ。苦し紛れの前線へのパスを飛び出したGK八重がキャッチ。すぐさま大きくハンドスロー。受けた飛鳥は今度こそボールを要求する高見に長いパスを打ち出した。
下がりながら受けた高見の背中にカナダ選手が張り付いたがそれを背中ごしの反転動作で軽くかわしてすぐさま前線にスルーパス。その瞬足を武器にするツートップ天羽がカナダのディフェンスラインの裏に抜けて受ける。線審の旗はあがらずGKと1対1の特大チャンス。
これを余裕で決めて追加点。前半21分で2-0とカナダを突き放した。









「ひとつ聞く。君は何になりたいんだ?」
珍しくひどく饒舌なハーレンの言葉を聞きながら、飛鳥にその質問の答えは見いだせなかった。
SCMのトップに上がって初めてもらった背番号は偶然にも森下茜が付けていた19番。
飛鳥はそれに運命を感じ、そして彼女を目標とすることを決めてしまった。
そしてそれはTMリーグ有数のレジスタと言われている現在でも変わることはなかった。







後半25分、千葉ちひろとの交代を告げられた飛鳥はピッチサイドのちひろとハイタッチをしてからベンチに戻る。その10分前に交代した可莉奈が笑顔で飛鳥を出迎えた。
電光掲示板の4-0というスコアを見てから飛鳥は可莉奈に微笑み、ベンチに座る。
ベンチ脇でハーレンはFWの佐倉とDFの新堂を呼び出していた。早い時間帯だがここで交代枠6人を使い切ってしまうつもりのようだ。


そしてタイムアップの3度の笛が鳴り響き、スタジアムの日本サポーターは歓喜に沸き返っていた。
スコアは飛鳥の交代時から動かずの4-0。二見瑛理子を中心とした新しいDFラインは破綻を見せず磐石の構えでカナダの攻撃陣をシャットアウト。
中盤でよく動いた里仲なるみは見事な守備を見せ、飛鳥の展開がゲームをワイドにする。
右サイドフル出場の川添は攻守両面でバランスのとれた動きで貢献。可莉奈は再三の突破を見せてカナダの右サイドを完璧に封じ込んだ。
攻撃陣はトップ下高見のパスが冴え渡り、後藤2得点天羽1点、そして可莉奈に代わって左サイドに入った主人光がドリブル突破から1点。
新生ハーレンジャパンはこれ以上ない完璧な試合でその船出を勝利で飾ったのだった。




だがその中でも飛鳥の心中は冴えない。
気がつくと、ハーレンから問われた質問が頭の中をぐるぐる回る。

(私は、何になりたいんだろう……)


目指している森下茜という存在が飛鳥をここまで伸ばした。それは疑いようのない事実であるし、本人もそれは自覚している。
もう、そろそろ目指すだけでは駄目なのか?
越えることを考えなければいけないのか?

だが、飛鳥の中に茜を越える明確なビジョンは存在してなかった。




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【2013/04/15 05:28 】 | Japanese representative | 有り難いご意見(0)
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