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【2017/10/21 23:06 】 |
気が付けば信じあっていた

熱戦のヴァレンシア戦の次の日、試合出場した選手たちは週末の試合に向け、オフとなっていた。
練習自体は行われるという事でメンタルコーチ(そういえばそういう肩書きだった)である橘恵美はクラブハウスに行く準備を整えていた。
スポーツバックに荷物を詰め込んでアパートメントの扉を開ける。すると…


「カミュ?」


扉の脇でカミュ・ファルコーニが膝を抱えて寝息を立てていた。






「ああ、気にするな。お姫様の気が済むようにしてやれ」
「はい、ではよろしくミステル」

恵美は携帯電話の通話ボタンを切る。そして部屋を見る。
カミュ・ファルコーニはお茶碗にスプーンという恵美自身としては許せない組み合わせで白米をがつがつ食べていた。
小皿に盛ったスクランブルエッグも皿を持って口元に。マナーも礼儀もあったもんじゃない。
でも本当においしそうに食べる彼女を見ていると怒る気力も沸かないから困ったものだ。


「ところで、どうしたの今日は」
恵美はカミュの隣に座布団を敷き、その上で座った。この言い方からもわかるとおりカミュの突然訪問は初めてのことではない。だからこそカミュの使う専用のフォークやスプーンを用意しているのだ。恵美自身はどんな食べ物でも箸を使う徹底っぷりだ。

カミュは右手に持ったお茶碗をテーブルに置くと不機嫌そうな顔をして懐から丸めた新聞を出して恵美に手渡した。恵美がそれを広げると、昨日の試合のPK、カミュの蹴ったPKで賛否両論が繰り広げられているのだ。


「…パパに怒られた」
「パパ?ああ、アンドレア・ファルコーニさんね」

カミュの父親はBucchiiよりも年上の元サッカー選手。ACミランに生涯をかけて所属し、グランデミランの称号を持つ伝説的なプレイヤーだった。

「PKは真面目にやれって…」
「ああー」

あのラボーナキックでのシュートのことか。恵美は思わず笑ってしまった。

「笑い事じゃないっ!」
「ああ、ごめんなさい」
憤慨するカミュに笑いながら誤る恵美。カミュは機嫌を損ねてぷいっと横を向く。

「そうね、人からみたら真面目にやってないって思われちゃうよね」
「カミュは真面目に…!」
「わかってるわよ」

恵美はにっこり笑う。

「誰もわからなくても、あなたのパパがわからなくても―」
恵美はそこで一旦言葉を切る。

「私はカミュが真面目に、真剣に考えてあれを蹴ったのをわかってる。勿論ミステルだって、他の仲間だって」

もう3年になるんだ、カミュ・ファルコーニというファンタジスタと出会ってから。
わからないわけはない。
それを聞いたカミュはぱっと笑顔になる。

「そうか!エミはわかってるよな!あれはなー意表を突くって思ったんじゃなくてだなーえっとな、」

カミュは先程までの機嫌の悪さはどこへやら、急に笑顔になってべらべらとしゃべりだす。この子はもう19歳になるのだが印象はもっともっと子供。それは出会った頃から変わってない。


最初の印象は最悪だった。
私はやっぱり自由奔放すぎるカミュの真意というものに触れようとしなかったし、カミュも真意を見せようともしなかった。カミュは露骨に私を嫌っていたし、私も折れようとは思ってなかった。

それでもミステルはカミュのメンタルトレーナーとして私を使い続けた。
そしていつの頃からか、信頼関係が築けるようになっていた。本当にいつの間にかだった。
私が折れたのか、彼女が折れたのかは未だによくわからない。
ただ、そんなことは私にとっても彼女にとってももう、どうでもいいことだ。



「さて、それじゃどうしましょうか?」
「えっとねー、じゃああの話がまた聞きたい。サダコを開始10分で退場させた試合のはなしー」
「ええ、いいわよ」








こんこん
ドアがノックされる。開けると鼻の頭を真っ赤にさせた森下茜が笑顔で立っていた。
「どうしたの?」
「うん、恵美さん練習来てなかったからね、どうしたのかなって」
「練習?だって森下さんは今日練習ないんでしょ?」
恵美はじろりと茜を睨む。茜はあわてて首を振った。

「違うって、ただ休んでも疲労って抜けきれないから少し走って、ついでにクラブハウスでマッサージ受けてきたの。ほら、アクティ…なんとかってやつ」
「アクティブレストね」
「そうそうそれそれっ!」

恵美は茜を部屋に招き入れる。部屋に入った茜はそこいる先客に驚いたと同時に笑顔になる。
ベッドの上でカミュが寝息を立てていた。

「ふふ、かわいいねーカミュは」
「あら、こっちは朝から大変だったのよ。ご飯は食い散らかすし冷蔵庫は勝手に開けるしで」

そう文句を言いながらも笑顔を見せる恵美。

 



「で、何?わざわざ来たからには用事、あるんでしょ?」
「うん、ちょっと聞きたいことがあるの」
茜に座布団を勧め、恵美と茜は向かい合って座る。

「次のミラン戦、ミステルが、『カミュは使わない』って言ったからどういうことかなって」
次の週末、サン・シーロでのミラン戦が控えている。だがBucchiiはカミュを使わない、若しくはベンチスタートをさせるといった感じの話をしていたのだ。
強豪ミランとのアウェー戦、スクデットのことを考えれば負けるわけにはいかない。だからこそファンタジスタであるカミュの力は必要不可欠だと思われるのだが。
 

「ああ、そうか森下さんは知らなかったのね」



「カミュは元々ミランのプリマヴェーラ出身なのよ。そしてデビューもサン・シーロ」



「ミランにとってはカミュ・ファルコーニは裏切り者同然なのよ」
 



 

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【2011/07/19 21:25 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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