忍者ブログ
  • 2017.09
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.11
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2017/10/23 13:30 】 |
相性問題


東京都内某所某音楽スタジオの地下、10畳ほどの部屋の半分を占める機材の中に彼らはいた。
これに慣れていない人には心臓に悪いくらいの轟音が部屋中に響く中、バンドメンバーとスタッフは真剣にその音を吟味し、注文をつけ続けていた。これがレコーディングの最終段階である、「トラックダウン」という作業だ。


「よう、鈴音。お前の前にいたところにアメリカからの選手が入るみたいだな」
一息つき、弛緩した空気が流れていたときバンドメンバーの長髪の青年が背の低い少女に向かってそう聞いた。その青年の左手にはコーヒーカップ、右手にはスポーツ新聞が握られていた。
「ああ、相沢選手ですね。SSSで少しだけ一緒でしたけど」
鈴音はスタッフと音色について簡単な打ち合わせを済ました後、右手にティーカップを持って青年の傍らに座った。
「へえ、じゃあ今年のSCMは優勝とか狙えちゃうのか?」
それはまるで鈴音がいた時は優勝できなかった事を皮肉っているようにも聞こえない事もないが、青年の言葉にそれを感じさせるような不快感はない。多分そこまで考えての発言ではなかったんだろう。
鈴音は一瞬不機嫌になったがそこまで考えをめぐらすとその質問の本質について少しだけ考えた。


「そうですね、私はアメリカでの相沢さんの事もずっとチェックしてたからわかりますけど…」
「凄いね、アメリカも視野に入れてたのか」
「そりゃあ、これでも元代表ですし海外も全く考えなかったわけじゃないですよ」

鈴音は悪戯っぽく笑う。結果的に海外には行かなかった、いや行けなかったのだがそれでも将来的なビジョンを掴むために先に海外に行った日本人選手の動向はほぼ全ておさえていたつもりだ。

「多分、相沢さんと今のSCMの聖ちゃ…いや松原監督の相性は最悪だと思いますよ」
事も無げにそう言い放つ鈴音に青年は驚いた顔をする。

「性格的というわけじゃなくて、サッカーのプレイスタイルっていう意味ですけどね」






今日もSCMグラウンドでは選手たちが紅白戦をやっている。
最初の日こそほぼランダムに選手を分けていたのだが1週間もたつとそろそろレギュラー組とサブ組で分かれ始めてくる。それは監督の意図するところでもある。

そうやってサブとレギュラーをきちんと分けていくことによって選手間でも競争意識を育てることが出来る。
勿論それだけではまずいが、その辺はキャプテンの本田飛鳥やベテランの神条芹華や草薙忍が仲間意識も同時に盛り上げていく。
その辺のさじ加減の巧みさがこの松原聖のうまいところなのかもしれない。

そして1週間目にして初めてビブスを着たレギュラー組に入った暁美ほむらが前線に鋭いパスを出し、積極的に前に走る。
肉体改造で得た自信が彼女にとってプレーそのものを劇的に積極的にした。



「うん、いいわねえ」
「ですね。ユース時代よりもずっと鋭く、厳しいところを通してきてる。そこからシュートに向けてボールを貰う為の動きも良くなっている。前は捌く事が優先してその先がギクシャクしてたのに」

松原聖と川田知子の両方とも、ほむらに対しての評価は高い。
そして彼女たちの肉体改造は未だ進行中であり、そんな状態でも手を抜かない姿勢も評価の高さのひとつでもあった。


と、そこに青いコートを羽織る女性が練習場に入り込んできた。その後ろには背の小さい、よく見かける少女を従えている。
松原聖はそれを見てにやりと笑う。


「やっと、来たわね」






「初めまして、相沢ちとせいいますっ!今日から世話になります!」
コートを脱ぎ、サングラスを外したちとせは相変わらずの人懐っこい顔をしながら大層大げさに頭を下げた。
「こちらこそよろしく、監督の松原聖よ。みんなからは聖ちゃんって呼ばれているからそう呼んで」
「ほんじゃ、ヨロシク聖ちゃんって早すぎかー?」
聖とちとせは笑いあった。その後川田知子コーチとも挨拶を交わすちとせ。

「ま、選手たちの挨拶は練習の最後にでも」
「せやか?ウチなら今すぐでも参加できるで」
「だめよ。アイアンズからデータは貰ってるけど、こっちもでもメディカルチェックはしないといけないから」

結局紅白戦をコーチたちと見ることになったちとせ。その目は戦術的に理解しようという感じではなく、むしろ羨望に近い感覚であったように見えた。


コーチ陣から少し離れた松原聖はそのまま帰ろうとしていた神谷菜由を捕らえていた。
「ちょっと菜由ちゃん。頼んでたちとせの映像データ来なかったわよ」
「あ、あれー?おかしいなあー送ったはずだったんだけど郵便事故でも起こったかなー最近郵パックひどい状態だし(いつの話だ)」
「ま、いいけど」

聖は菜由にかけていたスリーパーを解く。

「自前で手に入れたから」
それを聞いた菜由の顔が明らかに変わり、舌打ちをしそうな表情に。

「ホントあんたは大した詐欺師だこと。契約前にあれみたらどんな事をしても契約をやめさせるところよ」



聖は真剣な表情をして菜由に向き直る。

「あなたは相沢ちとせをどうしたいの?潰したいんじゃないの?」
顔を上げた菜由は先程の表情ではなく、いつもの笑顔だった。

「さあ?我々LCCは道を作るのが仕事だから。そっから先はあの子の領分よ」




PR
【2011/07/25 17:11 】 | Others League | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
<<ファンタジスタとして、ひととして | ホーム | 凱旋!!?>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














虎カムバック
トラックバックURL

<<前ページ | ホーム | 次ページ>>