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【2017/05/24 22:26 】 |
ファンタジスタとして、ひととして



「いいかね、私は真剣に話してるんだよ。いつもの冗談だと思わないでくれよ」
白衣を着た初老の男性は目の前の丸椅子でいかにも不機嫌そうに座っている日本人男性に向かって説教をするように懇々と話し始めた。





老人の説教から開放されたその日本人男性はコートの襟を立てて寒さに震えた。
鈍痛のする下腹部を左手でおさえて痛みに顔をしかめていると後ろからよく聞いている足音が聞こえてきたので振り返った。


「カントク」

鼻の頭を真っ赤にした森下茜がこの寒いのに額にうっすらと汗を浮かべて息を切らせていた。





カミュ・ファルコーニはイタリアミラノの町にアンドレア・ファルコーニというACミランの至宝と呼ばれる名選手の一人娘としてこの世に生を受けた。
母親は彼女が3歳のときに病気で他界、なのでカミュ本人としてはあまり母親の事を覚えていないうちだったのが精神的に傷を深くしなかったのかもしれない。長い黒髪で物腰の柔らかい人物だったようだ。

サッカー選手の娘だったから、というわけではなくある程度の年の頃になれば誰でも男女問わず路地裏でサッカーをするようになるし、カミュもその例に漏れることはなかった。
だが才能が圧倒的過ぎた。
アンドレア・ファルコーニのように計算されつくしたレジスタのようなパスサッカーを根底に持っていれば親の七光りと言ってしまえばそれで済んだ問題だったのだが、そうではなかった。

ファンタジスタとしての片鱗は既にその頃から姿を見せ始めていた


ほどなく12歳でACミランのスタウトの目に留まり、プリマヴェーラ入りしその中でもあっという間に頭角を現す。
そしてトップ昇格を何と14歳という史上まれに見る早さで成し遂げてしまったのだ。


そしてデビューのとき、
後半35分からの出場で、何と2点を挙げる活躍を見せてしまい。一気にスターダムに
でもあまりに過ぎた活躍は時に妬みなどの負の感情も巻き起こす。
カミュはチームメイトからの露骨な虐めの対象に会い、更に当時の監督との起用法についての対立も重なってデビューした年にミランを退団。事の経緯を知っているAのクラブはどこも彼女との契約に踏み切れず、手を伸ばしたのが女子チームを結成したばかりだった2部のASローマだった。



「そうなんだ…」
「ええ、まあウチでも最初はカミュをどう扱えばいいかわからなかった節はあるみたいだったけど」

布団の上ですやすやと眠るカミュの顔を見ながら茜が呟く。恵美は茜にお茶を用意しながら説明を続けていた。


「前にミステルが言ってたの。『ファンタジスタは必要悪』だって」


11人の選手はそれぞれポジションという役割を持っている。だがそれ以外にもある。
例えばキッカならCBで「DFリーダー」パオラならCBで「ザケーロ」。ジーナや茜ならCMFで「レジスタ」であり。代歩ならFWで「ストライカー」。
カミュ・ファルコーニはFWであり、「ファンタジスタ」。
でもチームの中で「ファンタジスタ」は絶対に必要なわけではない。いや、むしろその役割を持っている選手を抱えているチームの方が絶対的に少ない。

つまりサッカーにおいて、「ファンタジスタ」は特に必要とされていないということ
むしろ「ファンタジスタ不要論」が近代サッカーの中で蔓延していく。
システマチックに加速していく近代サッカーの中でその概念全てをぶち壊す「ファンタジスタ」はそのリスクとメリットの差が曖昧であり、現に「ファンタジスタ」として生まれてきたプレイヤーもその特性を隠し、戦術にあわせることを義務付けられて「ファンタジスタ」である事をカモフラージュして生きていかざるをえなかった。
今の近代サッカーという時代では、「ファンタジスタ」は絶滅危惧種にならざるをえない。


「でも、だからこそ今のローマは他のチームには無い強力なカードを持っていると言えるんだけど」
「うん、私もそう思う」
茜は深く頷いた。

だからこそ、ミラン戦で戦って欲しい。勝つために。



「Aに昇格したその年にアウェーのミラン戦、サンシーロね。これにカミュは先発出場したのよ」
「え、それなら…」
「開始3分で交代したの」


その試合の数日前からローマに脅迫状が届くようになっていた。内容は、「カミュ・ファルコーニを出場させるな」という内容。脅迫状の中にはカミュ本人に危害を加えるといった内容も書かれていて、ローマサイドはサン・シーロやACミランとも協議して警備の増強、警官の配備なども要請して試合に臨んだ。

「でもね、事故はおこったのよ」

ホイッスルがなった瞬間、カミュの足元に発炎筒が投げつけられて爆発。同時に観客席からも複数の発炎筒が見境無く爆発。
カミュ本人は飛び退って爆発から逃れたから軽症で済んだけど、観客の数名が重症。犯人はすぐに捕まり、ACミランのサポーターグループの一人だったことが判明した。


「内部事情で退団したとはいえ、あれだけ鮮烈なデビューしたカミュ・ファルコーニを良く思っていないミランサポーターはまだいるわ。フーリガン化しているグループもいるっていうし」


それからカミュはアウェーのミラン戦に出ることは無かった。脅迫状は今でも試合前になると届いているという。











「カントク」
茜はBucchiiに向かって頭を下げた。

「お願いします。カミュを、ミラン戦で使ってください」

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【2011/07/26 11:29 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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