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【2017/07/25 09:30 】 |
第29節 AC Miran vs AS Roma 9



ウィルマ・ビショップが出したロングボールは偶然か狙ったのかさだかではないが、中盤に張るカミュ・ファルコーニの足元に正確に届いていた。

カミュはミランゴールを背にしてボールの到着を待つ。だが後方からライラ・ニーラーとカルーア・クオーレの両セントラルMFが挟み込むように迫る。
ダブルボランチのふたりが同時にかからなければいけないほど、彼女は警戒されているということの証であった。



やってくるボール。
カミュは左足を少し上にあげ、インサイドでトラップ。ボールが足の内側に張り付いた様に見える。
そのままボールを張り付かせたまま反転、トラップと反転動作を同時にこなすという超テクニックにミランが誇るダブルボランチはあっさりと抜かされた。

抜いたカミュはドリブル開始、あっという間にエリア手前。CBのジゼラ・バレージが迫る。エリア内に清水代歩とリルハが飛び込む。レージィとジャンナがそれぞれマークに付く。

ミランのDFシステムはフィオレンティーナの3バックのようなラインコントロールでもなく、そしてローマのような「アタック&フォロー」のような形でもない。言うなれば「アタック&アタック」とでも言うべきだろうか。
ジゼラ・バレージもレージィ・ボスクメルクもローマのパオラのような「ザケーロ」であり、キッカやレイズ・フォーチュンのようなDFリーダーとは程遠い。個人能力の高さをベースにしたシステムを採用しているミランである事がこのディフェンスを見てもわかることである。

だからこそ、圧倒的な才能を持つカミュ・ファルコーニにとっては相性がいい。抜けば特大チャンスが待っているのだから。
その通りにカミュは数度ステップを踏んでジゼラの右脇を駆け抜けた。これでGKと1対1のはずだったのだが…


そのGKニーナ・バレンティノがすでにカミュの眼前に迫っていた。カミュは左足の甲でボールを浮かせ、ニーナの突進をかわしつつ柔らかく蹴った。

ループシュート

だが、ボールは僅かに高かった。クロスバーを越えてネットの上にぱさりと乗った。


カミュは電光掲示板を見上げる。時間は後半39分。あと2点とって勝つには厳しい時間になったのは事実だ。



そしてゴールキックから試合再開。
だったがニーナがやたらと時間をかけてボールをセット、蹴るにも時間をかけ、遅延行為でイエローカードを受けた。

(イエロー1枚で2分稼げれば上等よ)

時間は40分を越えた。




「あと5分…逆転、いえ同点も厳しそうですね」
ベンチで橘恵美がそう呟いた。
「まあ、今日は勝てなくてもいいさ」
Bucchiiはさらりと言ってのける。恵美は驚いた顔をしてBucchiiを睨みつける。

「それよりもカミュが自分の殻を破ってここに来れた事が最大の収穫だ。俺たちローマは更に強くなったんだぜ」
「でも……」
恵美はそれ以上言おうとしてから、やめた。でもこの試合で負けると事実上スクデットが自力では無理になる。それがわかっているのだろうか?
わかっているのだろう。この人はそういう人だ。


でも、あの子ならきっとやってくれる。
そう信じる事にした。




さっきのループシュート。結果としてゴールにはならなかったがこれで試合の方向性が決まってしまった。
ミランは攻撃に出る事をやめた。
残りの1点を死に物狂いで守る事に決めたのだ。
そしてその選択はDFリーダーのいない守備陣がゴール前までDFラインを低くする事につながった。それに併せて中盤もポジションを低く保ち、最前線のシア、マレクの2トップは孤立する事になる。
それを敏感に感じ取ったのかミランベンチが動き、マレク・ファンバステンに代えて守備的中盤の選手を投入し、その方向性に拍車をかけた。


「く、きついな。中盤を固められるとカミュにスペースを作れない」
オーラがベンチで歯噛みする。結局ファンタジスタだと言っても常に囲まれた状態ではボールを受ける事も出来ないし、そもそも伸び伸びとプレーする事もできない。
だからこそ茜はサイドのオーラやアギーの動きで牽制をかけたりしながらカミュに動けるスペースを作る事を意識する。それがファンタジスタを最も効率よく動かす事につながるからだ。

「多分、大丈夫」
ベンチの茜がそう呟いた。
「カミュだけのチームなんかじゃないし」

茜の視線は、前線でじりじりとした熱気を出す黒髪の少女に向けられていた。




やっとの思いでミランからボールを奪ったジーナ。彼女の疲労も相当なものだがキャプテンという立場、そして責任感がそれを押しとどめている。
べた引きの状態。FWのふたりとカミュは元よりその他のサイドの選手、アギーやイルマにもきっちりとマークが付いている。

(さてどうする…)
カミュはサラス、そしてライラのマークを受けながら何か叫んでいる。歓声に紛れてその声は殆ど聞こえないが、右サイド奥を指差している。

(信じるしか、ないか)
ジーナが右サイドに向けて大きくボールを出した。そして、そのボールに向かって右サイドバックのローザ・ベルガメリが発進していた。

ローマの両サイドバックは元々攻撃的ではない。唯一攻撃的であったナイジェリア代表のビウスイ・ケディアは茜の本格的加入によりEU外枠の問題から2部のチームにレンタル移籍していた。

攻撃的では無いといっても、全く攻撃に絡まないという訳ではない。
ローザ・ベルガメリはローマのサイドバックの中では攻撃的な気質を備えていた。ちなみに左サイドを任されているサンド・フィオーリは、「攻撃?オーラがいるからいいじゃんかよーめんどくせえ」と監督の前で堂々と言うほどの逸材である(笑)

ローザはタイミングよく飛び出し、その先にジーナの放ったロングボールが跳ねている。

(…いいね、このままサイドを抉ってクロス。カホ辺りが決めてくれたりすれば私一躍アシストでWOMとか取れちゃうんじゃないのー? そうしたら来季の年俸も跳ね上がったりして、子供の頃からの夢だったフランスの古城とか買えちゃうんじゃないのー?ワクワク)

ちょっと夢見がちな少女だったりするのだが、それを実行できるだけのスキルは持っている…はずだ(笑)

ミラン陣内サイドライン際でボールを受けた瞬間、目の前に黒い肌のコーチャが現われた。

「っととっ」
突進を切り返しでかわすが異常な速さで体勢を立て直したコーチャはまたも迫る。そういう身体能力の高さは流石アフリカンだと言わざるを得ない。

「こっち、ローザ」
中央からアギー・バックの掠れ声が聞こえてローザは殆どノールックでパスを出す。
(ん?右のアギーが中央ですか?)

パスを出した後ルックアップして状況を把握。ローザはコーチャのマークを引き連れながら中央に絞る。


(よしよし、相思相愛のアギーちゃんにボールが来たって事はアタシしかないよねー)
リルハはそう思い込んでゴール前でマークを外す動きを速めた。だがアギーはリルハのほうを見ずに首だけ振った。
(ひでーな。でも何でアタシの考えが読めるんだか…)
とは言えアギーのプレーの選択肢は増やしたほうがいいに決まっている。リルハは左サイドに流れる動きをした。アウリシッキオがその動きを警戒し、マークに付いた。
中央でアギーがボールを受けた。その場でトラップするとボランチのライラ・ニーラーがボールを奪いに来た。
が、キープ。渡さない。
元々中央のポジションでレジスタとしてやっていた彼女であるし、それくらいのことは出来る。

(もう一人…)

ライラ、そしてサラス・イナベルツがこちらに向かってきたのを確認したアギーは右サイドに向かって速いパスを出した。中央からアギーとポジションチェンジしたカミュ・ファルコーニが走りこんでいた。だがカルーア、ジャンナのふたりを引き連れたままだが。


代歩はゴール前でジゼラ・バレージのマンマークに合いながらもチャンスを伺っていた。中央アギーから右のカミュにボールが送られるのを見る。そのときカミュと一瞬だが目が合った。


(来る……!!)


間違いない。あのチビ助は最後にアタシにパスを出す。
なぜそれがわかるかと言われても困ってしまうのだが、わかるからしょうがない。カミュもきっと同じように答えると思う。なんであのサダコが理解しているのかさっぱりわからないと―
代歩は一瞬うしろに下がる。バレージもその動きについていく。が、その刹那爆発的な加速で裏に抜ける動きをした。下がりきったDFライン、オフサイドの心配は全く感じなかった。


(上……?いや足元だろやっぱ。てか足元がいいなー)


その通り、足元にボールがやってきていた。
















右サイドで受けたカミュはそのままサイドをドリブル。カルーア・クオーレが併走、その後ろにコースを潰しながらフォローするジャンナ・ブレシネス。


(クロスをあげさせはしないっ!!)


カルーアはクロスを出すために足を振り上げる瞬間を狙う。その瞬間に距離を詰め、クロスのコースに割り込む。更に後ろのジャンナがいればカミュが撃てるコースなんかなくなる。
だがカミュはドリブルの中、殆どノーモーションで、

つまり足を振り上げる動作なくボールを叩いた。威力は十分とはいえないが、グラウンダーのボールが出た。
だが、それはカルーアの正面に飛んでいた。


(緩い、貰った……)


が、ボールは併走するカルーアの股下を抜ける。
(クソっ、歩幅を合わせられたっ?だけど後ろのジャンナが…)
カルーアが振り返った瞬間、信じられない光景がカルーアの視界に写っていた。






ボールはそれほどの威力を伴わないまま、ジャンナの股下も抜けていた







ひとりの股を抜くクロスならちょっとテクニックを磨いたやつであれば出来るだろう。
オーラも、そしてコルネリア・アウリシッキオだって狙うことは可能だろう。
だがカミュ・ファルコーニはそれをふたり同時にやった。
ふたりの歩幅を測りながら、同時に抜くタイミング、ボールスピード、それをノーモーションでこなす。
常人の業ではない。


ボールの先にはジゼラ・バレージのマークを完全に外した清水代歩が。
ダイレクトで右足を振りぬいた。



後半43分、ローマが同点ゴールを決めた瞬間だった。




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【2011/08/14 17:19 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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