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【2017/07/25 09:31 】 |
遠い約束


「ういーひっく。もうたべられなーい」
テンプレ調の声を発した酔っ払い亜季、そして既に眠りの国の住人菜由。
キルシェは店を出て菜由を背負い、亜季を肩に担ぐという凄技を見せつつこの酔っ払い2名に辟易していた。

亜季だけでもホテル行きのタクシーに詰め込んでしまおうと考えたがあいにく彼女の泊まっているホテルがどこにあるのかわからない。

「家に行くか…」
仕方なく、キルシェは菜由の家に向かうことにした。





薄暗い中、ほんの少しカーテンの隙間から漏れる光。
亜季はそれで目を覚ました。いつもなら気にもしないほどの明かりなのだが環境、そして自己の調子が変わっているのか多少敏感になっているみたいだ。
そしてキンキンと痛む頭。飲みすぎの二日酔いなのは間違いないところだ。


(ここ、どこ?)


落ち着いてまず考えたのはその事。
確か夕べは新横浜で菜由としこたま飲んで飲んで飲みまくって…
その先から記憶がぶっ飛んでる(笑)
今いるのは6畳の部屋。調度品類は見られず、学習机と参考書だらけの本棚。そして壁にセーラー服が掛けられている。
亜季は痛む頭を振りながらベッドから降り、部屋を出た。
薄暗いのは相変わらずだが豪華な調度品といかにも高級そうなソファー、そして大画面液晶テレビ。やっとここがどこだかわかりかけてきた。
ソファーには見知った顔が横になって眠っている。菜由だった。

「ここ、菜由とキルシェの家か…」

初めて見る菜由たちの家。生活感を感じないキルシェの部屋で亜季は寝ていたようだ。
リビングもそれなりに豪華ではあるがあまり生活感を感じない。菜由はいつも外を飛び回っているし、キルシェはあの通り家事や炊事なんかは殆どしないだろうから、必然的にそうなるのかもしれない。


そういえば、キルシェはどこにいるのだろう。
そう考えたとき、窓の外から微かに何かを叩く音、そして風を切る音が聞こえた。亜季はリビングの大窓を覆うカーテンを少しずらした。

外を覗くと大きめの庭。そしてそこにTシャツとホットパンツ姿のキルシェがいた。



亜季はカーテンを開け、窓も開けた。キルシェはすぐに亜季の姿に気がついた。

「起きたか、亜季」
「うん、頭痛いな」
「アルコール摂取が多すぎだ。少し考えないとな」
そう言いながらキルシェが微笑む。亜季はそれを見て目を見張った。

「へえ、アンタが笑うの珍しいな」
「そうか?キルシェだって人間だ。笑うし怒るし悲しむぞ」

キルシェはそう言って亜季から目を逸らした。
そして腰を落とし、動きを再開した。


演武?
空手の演武、若しくは太極拳などの型をしているようにも見えるが少し違うようにも思える。
腕を振って突きや肘。足を振って前蹴り、回し蹴り、後ろ回し蹴り。と多彩な技を見せる。
技を出す度に空気を切り裂く音が大きく聞こえる。


「キルシェ、それ空手なの?」
無言に堪えられなくなった亜季がそう聞く。キルシェは演武をやめて亜季に向き直る。
「空手じゃ、ないな。沖縄土着の格闘術、『手』だ」

手??

亜季が首を傾げているとキルシェがまた視線を移す。庭の端に植えられた木。その腰の辺りに大型トラックのタイヤが括り付けられている。キルシェはそこに歩み寄った。
そして構える。右足を後ろに置き、呼吸を整える。そして右足を振りぬく。
外円の中心を打ち抜き、タイヤがその瞬間、内部から爆発するように破裂。バラバラに弾け跳んだ。


「すご…」
蹴りにそれほど力強さは感じなかった。だがタイヤは原形を留めないほどバラバラに弾けた。
「これが『火神(ヒヌカン)』って呼ばれる業だ」

沖縄土着の格闘術である「手」にはいくつかの流派があるらしいが、その中でもキルシェが学んだのは人体破壊に特化した流派の技だという。

「年々格闘術ってのは進化している。古流である『手』も既に時代遅れなのは否めない。最強だなんておこがましくて言えない」

キルシェがいま披露してくれた「火神」にしても、裸足でやるからこそアレだけの破壊力を生み出せるのであり、現在の靴やスニーカーではその威力は10分の1以下になる。
常に戦いの場に身を置いているキルシェでさえ、自身が「手」の技を実戦で使う事など殆ど無いという。


「だからと言って廃れさせるが正しいとも思えなくて」
「これは、姉さんとの絆だから…」


キルシェはまた演武に戻る。亜季は飽きもせずにそれを眺める。
東の空から太陽の光が段々と眩しさを増してくる。キルシェは全てのメニューを終え、物干し竿に掛けていたタオルで顔を拭いた。





「亜季、頼みがある」
不意にキルシェがそう言った。その表情は真剣そのものであり、亜季は少し狼狽しながらも表情を固くした。

「この先、もし菜由とキルシェになにかあったとき、菜由が残した仕事を手伝って欲しい」
「なにかあったとき?」
亜季は鸚鵡返しに聞きなおした。キルシェは深く頷く。

「そう、なにかあったときだ」
よくわからないまま、亜季は頷いていた。



1年後、その「なにかあったとき」が訪れるとは、夢にも思っていなかったのだが…



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【2011/09/01 20:33 】 | Killshe's story | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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