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【2017/07/25 09:29 】 |
劣勢の裏返し


『試合開始15分が経過、現在のところホームSNAシュート7本、そして対するSCMはシュート1本です。ここまでではどうですか神戸さん』
『千葉選手のパスミスで試合展開が大きく動きましたね。ホームの後押しもありますし札幌のジャイアントキリングありますよこれは』
『前年度総合2位のSCM、まさかの大苦戦です』







ペナルティ・アークでパスを受けた沢渡ほのかがノールックでヒールパス。DFの隙間をゆったり抜けたボールは後ろから飛び込んだリピンスキーの足元に。
リピンスキーがダイレクトシュートを放ったがSCMキーパー東が超反応を見せて横っ飛び。ボールを掻き出した。
続くコーナーキック。リピンスキーが中央に蹴りだしてオーバーラップした桜町と鞘子が競り合い、僅かに鞘子の頭が早くボールに触れてエリア外にクリアしたがまだ小さい。飛び込んだ猪飼がほむらのマークを弾き飛ばしながらミドルシュートを打ち込むがクロスバーを僅かに超えた。
客席からは残念そうな声が響き、そして更なる応援に変わっていく。SCMは飛鳥を中心に声を張り上げているが大きな歓声にかき消されていく。


「まずいわね。完全に主導権を持っていかれた」
松原聖―ペンギンver.―は眉間に皺を寄せて呟く。
えてしてこういった完全アウェー戦ではホームより先に主導権を握らないと勝ち目は薄い。
ホームであるSNAは大歓声をバックにリスクを負った戦術でSCMに牙を剥く。そしてことごとくそれが成功しているのが余計に選手たちに負担になる。
結果的に攻撃的に振らないといけないはずの両サイドの芹華に忍も下がって守備に忙殺され、局面を打開するためのトップ下も経験不足のほむらではそれも期待できない。

何とかしないとこのジリ貧の状態では亀のように守りを固めてもいずれ突破される。だが無為にリスクを負っても危機的状況を増やすだけだ。
どこで前に出るか。どこまで守りきるか。
それは監督である聖の指示ではできない事。実際にピッチに出ている選手たちだけで考えなければいけないのだ。



「落ち着いて、しっかりマークを確認してっ!!」
キャプテン飛鳥が精一杯の声を張り上げるがどこまで通っているか疑問だ。
リピンスキー、沢渡、そして滝沢という攻撃のトライアングルは正直圧巻だ。
入ったばかりの沢渡と他の選手の連携はまだ完全ではないと踏んでいたが内実はまるで違う。よくぞこの短期間でここまで連携を深められたかと賞賛の思いさえ抱いてしまう。
特にリピンスキーは流石ロシア代表クラスというだけあってレベルの違う動きをしている。


でも、ここで押し込まれるだけじゃ意味がない


「ほむらっ!下がらないで前で待ってて」
飛鳥は守備的に動くほむらに叱責気味に声を飛ばす。ほむらはこくりと頷いてから前線に向かった。


(どこで動くか……)
飛鳥はイメージを膨らませる。
エリア手前、バイタルエリアでボールを確保して素早いカウンターを狙うしかない。飛鳥はそれを成功させる鍵となる選手に視線を送る。その選手は飛鳥の意図を汲み取ったのか、笑顔を見せて左手を上げた。

更に飛鳥はこの展開を作ってしまったと言える紀梨乃の元に向かう。紀梨乃はいつもの明るい雰囲気をなくして蒼白の表情で守備をこなしていた。

「…………」
何かを耳打ち。それを聞いた紀梨乃は真剣な表情で頷いた。



「さーって、そんじゃ守ろうっかっ!」
飛鳥は周りに、そして自らを鼓舞する気持ちを込めてそう叫んだ。






SNAトップ下であるリピンスキーはこの状況をよく理解していた。
確かに今は自分たちが優勢であるがSCMの地力は開始2分の攻撃でわかっている。一瞬でも気を緩めたらあっという間にひっくり返される。
だからこそこの優勢の間に先取点が欲しい。
中央付近でボールを受けたリピンスキーは飛鳥のマークをバックステップでかわしながら左サイドに速いパスを送った。走りこむのは北野スオミ。右サイドは女子代表常連の川添珠姫が蓋をしているという事も考えて左を攻撃の起点としたい。
スオミはリピンスキーの意図を汲み取ってドリブルでサイド突破を図る。芹華をあっという間に抜くと次の相手はサイドバックを本職としない里仲なるみ。スオミはちらと前線エリアを見る。
中央に長身滝沢、二アに沢渡、ファーにはCMFである山口が走りこんでいる。ヒフミはすいとスピードを緩め、マークに走るなるみとの距離を稼ぎつつ斜めにクロスを放り込んだ。アーリークロスだ。

ヒフミの狙いはファーサイド山口。ファーの山口が折り返しての滝沢、もしくはぐいと中央に絞る沢渡。若しくは後ろに落としてリピンスキー。この形はSCMとの対戦が決まってから繰り返して練習してきた。
鞘子、草薙忍と高さのあるSCM守備陣に素直に高さ勝負はいくら滝沢という強力なFWを擁しているとは言え分が悪い。だからこそファーから中央若しくはニア、バックへの折り返しで混乱を誘うというのが狙い。大きくクロスを入れることによりファーの山口は少しはやりやすいはず。
両サイドが脅威であるSCMだからこそのアーリークロス。これが監督である森永冬真が示した戦術の一つ。

クロスは狙い通りファーサイド山口に向かう。マークにつくのは川添珠姫。だが珠姫は身長が低い上に絞る動きを伴いながらの守備のためタイミングが遅れている。
珠姫は山口のシュートコースを塞ぎつつ競り合う。意外に高いジャンプ力に山口は驚愕しながらも身長差のアドバンテージでボールを捉える。シュートではなく中央への折り返し。鞘子と滝沢がボールに向かって競り合いながらジャンプするがボールはその上を抜ける。反対から絞り走りこんだ沢渡の足元にボールが落ちてくる。飛鳥はここまで予想していたか沢渡にマーク。体をぶつけながらシュートを阻むがここ一番の動きを見せた沢渡がダイレクトシュート。GK東は反応するも滝沢の動きをケアしていたため完全に出遅れた。


きまった―…………


シュートコースに飛び込む影。
今季遂にHANから完全移籍を果たした水島密が身を挺してボールを阻む。肩口に当たったボールはポストを叩いて跳ね返る。サイドに流れたボールを確保したのは里仲なるみだった。



(ここだ、ここしかないっ!)
この劣勢を裏返すのはここだっ!

飛鳥の考えは既にチーム全体に浸透している。当然なるみはトラップした瞬間前線を睨みつけていた。
北野スオミが迫るがその股下を抜く鋭いパス。
固めの芝はグラウンダーでも勢いを殺すことなくまっすぐサイドライン際を走る。受けたのは神条芹華だった。


芹華は右サイド中央付近でボールを受けてサイドラインではなく中央に絞り込みながらドリブル。中盤を守るのは猪飼ヒフミだけ。山口がリスクを負って前線に顔を出していたのが完全に裏目になった。
芹華はまっすぐヒフミに向かってドリブル。ディレイを目論んだヒフミだったが勝負を挑んでこられてはそれも出来ずにボールを奪いに行く。これも判断ミス。ヒフミは芹華のプレッシャーに既に負けていた。
フランスリーグアンで厳しい勝負に揉まれてきた芹華は自身の武器もよく理解しているしその判断に迷いというものは無い。
左足でボールをまたぐシザースを1回。その瞬間にコースを変えて一瞬でヒフミを抜き去った。
そしてバイタルに侵入、残りは3バックだけだ。

中央を守る桜町が芹華に迫る。シュートコースを潰しながら両足を揃えずに腰を落としてしっかり守る。芹華はスピードを緩めながら右にパスを出した。右サイドには中央に絞る芹華を見てポジションをチェンジした暁美ほむらが走る。
右サイド深いところでボールを受けたほむらはワントラップしてルックアップ。中央を睨みつける。エリア内には宮崎都が走りこんでいてロナ・ダンガードが張り付いている。もう一人のDFであるSNAキャプテン催馬楽はファーサイドに走る川崎忍を視線に収めながらエリア内に突っ込もうとしている芹華もフォローする体勢。
ほむらは右足を振り上げ、強くボールを叩いた。

グラウンダーだがクロスはマイナス。走る芹華に合わせている。芹華は桜町のマークに合いながらボールに向かって走る。右足のアウトサイドでトラップした瞬間、コースを切るように催馬楽が飛び込んできた。

が、ここで芹華左足でちょんとボールに触れて押すように左にボールを出した。その動作とは逆に右に抜ける。桜町と催馬楽は同時に動きに振られた。
ゆったりと転がるボールに走りこんだのは、千葉紀梨乃だった。
ダイレクトでミドルシュート。左隅を狙ったシュートは横っ飛びしたGK熊野の腕をすり抜けてゴールネットに突き刺さった。

前半23分、SCMが待望の先制点を挙げた瞬間だった。



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【2011/09/18 17:52 】 | Others League | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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