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【2017/05/23 02:27 】 |
カミュとエミ


1年ほど前のこと。
女子サッカーチームという事もあり、性犯罪についての事柄もチーム運営としては見逃す事はできない問題だった。
そこでローマは性犯罪を抑止防衛をする為に護身術の講習を行ったことがある。


講師は橘流柔術師範代の橘恵美。
羽織袴に着替えた恵美は巨漢豪傑で名を馳せるパオラ・ファウネル本気の突進を易々といなして大きく投げ飛ばした。

更にプレシャス・デーデが恵美を抱きこもうとするがそれを軽い動作でかわして両腕の関節を捻りあげる。
色々なシチュエーションで恵美は柔術の技を駆使し護身術を体現してみせた。


「橘流柔術は活殺術。活かすことも壊す事も思いのままです」


皆の前でそう言って微笑む恵美を、カミュは羨望の眼差しで見据えていた。




カミュは床に擦り付けていた顔を上げた。

「エミは、ジュウジュツの偉い人なんだろ?ジュウジュツは壊すことも、治すこともできるって」


よくもまあそんな事を覚えていたものだ。
恵美は1年前に確かにそういう類の事を言った覚えがある。
だからといって……

「頼むっ!エミしかもう頼れないんだ!」

カミュはもう一度頭を下げた。






カミュはラツィオ戦での負傷後、チーム指定病院の診察を受けた後、実家を頼って様々な病院、ミラノでのスポーツ医学の権威といわれる医者までも訪ね、2週間で治して試合に出れるように頼みまわった。
だがどの医者も答えはノー
守秘義務があるためカミュのその動きについてチームでは知る由もなかった。
だがそれだけの意欲を持ってことに臨むこの少女を恵美は知らなかった。


「アタシは、自分のためもあるけど、アカネが賭けている想いも知っている。だから、だから…」


カミュは顔を上げた。真剣な眼差しが恵美の体を貫く。



「だから、アカネの力になりたいんだ」





ああ、本当にカミュは変わった。
いたいけで、我侭だったただの少女から、
強く、そして人を思いやれる優しい女性に育ったんだ。
イタリアに来てカミュを見続けて、初めて味わうそんな気持ち。



「カミュ」
恵美は居住まいをただし、座布団に足を揃えて座りなおした。カミュは真剣な視線を崩さずに恵美の視線を受け止めた。

「足を、診せなさい」
その言葉にカミュはまるでひまわりのような笑顔を見せた。







患部は右足首。それを庇って動いてるからか左足も少し張ってる。
だけど左足は簡単なマッサージですぐに治るだろう。

それにしても驚くほど柔らかい筋肉。
この柔らかい筋肉で繰り出されるのがカミュのファンタジーなのか。


これなら、

治るかも、しれない―



恵美は戸棚から15センチほどの長い針を2本取り出す。そして患部である右足首部分にすっと突き刺した。
カミュが一瞬痛みで顔をしかめる。

「痛い?」
「う、ううん、痛くない」
カミュは少し顔を引きつらせながらも首を振る。そんなカミュを恵美はきっと睨みつける。

「嘘はダメよカミュ。痛いならちゃんと痛いって言わないと治療にならない」
「……ごめん、刺すときに痛かった」
「よろしい。じゃあ今は?」
「痛くない。少し熱い感じがする」


「いい、カミュ。これはあなたの痛みの中枢、凄く悪くなっているところの血流を多くして活性化を促しているの。こんな治療は本当は正当なものではないの」
恵美はゆっくりと、ひとつひとつの言葉を理解させるように呟く。
「だから、いま普通の医者に見せたら多分治療を止められるわ」

そこで恵美は言葉を切る。
そして、患部に注がれた視線をカミュの視線に合わせた。


「でも、橘流柔術師範代である橘恵美が、できる限りの事をする。インテル戦に出れるように治療を進めるわ。だから」


「だから、私を信じて」

恵美の覚悟の言葉。その言葉にカミュは深く頷いた。
この日、この時からエミとカミュ。カミュとエミの戦いが始まった。

すべてはインテル戦の為に―


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【2011/11/08 06:35 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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