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【2017/10/23 13:27 】 |
鮮血の決意


「ふう、参ったな……」
クラブハウスの廊下を歩きながら代歩は誰に言うでもなしにそう呟いた。

菜由の懇願
茜のプレッシャー
自分に何が出来るのか?
恐らく茜本人に指摘したところで、「大丈夫だってばー、それより代歩ちゃんもしっかり準備しないとだぞっ!」
とか言われるのがオチ。

「しゃあないな、うん」
代歩はもうひとり茜と近しい人物に相談する事に決めた。
ローマ監督、Bucchiiだ





「それで、カミュは本当に間に合うんだな?」
「はい。私の身命をもって必ず間に合わせてみせます」

監督室、大きな机と背もたれの大きな黒い皮の椅子に監督であるBucchiiは深めに腰を下ろして背中を背もたれに預けている。その机の正面にメンタルトレーナーである橘恵美が立ったままBucchiiに正対している。

「でもよー、間に合いましたって言っていざ試合に出したら5分で終了、とかそういうのはヤメだぞ」
「…………」
その言葉に恵美がぐっと言葉を詰まらせる。Bucchiiは背もたれから背中を離し、身を乗り出した。

「おいおい、マジなのか?」
「……正直に言いますが、恐らく30分もたないと…」

恵美とカミュが治療を始めてすぐ、その脅威の回復力に恵美は驚いたものだ。だがそれでも1週間で完全な状態にするのは無理。それほどカミュの傷は深い。
いまのままの驚異的回復力をもってしてもフルタイムはおろか、45分ハーフタイムまでももたないであろうと恵美は推測する。


「ふう、そうか…グホッゴホッ…」
Bucchiiはもう一度背もたれに体を預ける。そして口に手を当てて咳き込む。
明らかに顔色が悪い。恵美は初めてその事実に気がついた。

「それでも、インテル戦に出ることがあの子の最大のモチベーション維持になっているんです。だから…」
「ごほっ……わかってる。カミュには出てもらわんと、本気のインテルにアイツ抜きで勝てるとも思えん……ゴホゴホ」

「あの、大丈夫ですかミステル…」
「………ああ、悪いな。大丈夫だ」

大丈夫だとは思えない。土気色の顔、目が落ち窪んでいるし頬のこけかたも尋常ではない。明らかにBucchiiは体に変調をきたしている。



「…み、ミステル……」
「ゴホっ、グホッ、ゴホッ…………!!」


机の上に鮮血が飛び散った。
散らばる書類が見る見るうちに血の赤色に染まる。吐血したBucchiiの口元からは右手で押さえきれずに白いワイシャツにも血が滴り落ちている。

「み、ミステル……そんな……」
「だ、だいじょうぶ、だ……」


大丈夫なはずはない。恵美は動転しながらも机の隅にある電話の受話器をとった。

「きゅ、救急車を……」






ぷつっ





つながらない。
見るとBucchiiの左手が電話のフックボタンを押さえている。恵美は信じられないといった風に首を振った。

「み、ミステル…ちょっと…」
「呼ぶな」

口の両端から血を滴らせながら、そして目だけは爛々と輝かせながらBucchiiは恵美をにらみつけた。その眼光の強さに気圧された恵美は手に持った受話器をその手から滑り落とさせてしまった。


Bucchiiは幾分落ち着いたのか、右手で口元を拭うともう一度背もたれに体を預けた。


「……俺の内臓はもう、ボロボロなんだよ…」

何度医者から呼び出しを受けたかわからない。行くたびに主治医から入院と手術を勧められたがBucchiiはそれら全てを断っていた。

シーズン中

だという理由で。



「じゃあ、なおさら病院へ……」
そう口答えを試みる恵美だったがBucchiiは首を振る。



「後生だ。好きにやらせろ」

その言葉に恵美は両手で口に手をあて、泣き喚きそうになるのを堪えた。だが瞳からは涙の粒が幾筋もこぼれていく。


「橘、お前はとにかくカミュを1分1秒でも長くピッチに立たせる事ができるようにするんだ。それと選手たちには絶対このことは言うな。士気に関わるからな、わかったか?」
彼の決意は揺るがない。
ずっとBucchiiは傍から見ているから恵美にはそれがよくわかった。だから頷くしかなかった。



「あと少し…あと少しなんだよ…」
Bucchiiは痛む下腹部をおさえながら、呪文のようにそう呟いていた。


























「な、なんだよそれ……」
監督室の扉の外、壁に背中を押し付けた代歩が震える声でそう呟いた。
震えているのは声だけではない。
足も、手も、体も震えていた。

どうすればいい?
代歩は更に抱え込むことになってしまった。



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【2011/11/19 12:13 】 | LEGA-CALCIO 2009-2010 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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